3-19 尋常じゃない初心者たち
「なあ、ネコの嬢ちゃん。その短剣を見せてくれるか?」
九階層のボス戦……。
いや、魔力異常のイレギュラーで発生したボス魔物ヒクイドリは、ネコ獣人カレンに首を落とされた。
ラリットさんがカレンを褒め称える。
カレンもまんざらでもない様子だ。
「スゲエ一撃だったな! ヒクイドリは、あの細い首が弱点だ。見事に弱点を突いたな! スゲエぞ!」
「ニャハ! みんながヒクイドリを引き付けてくれたから、背中がガラ空きだったニャ! 私の短剣が見たいニャ? これニャ!」
「いや、それにしても凄い切れ味! さぞ名のある鍛冶師が打った短剣……あれ?」
カレンから短剣を受け取ったラリットさんだが、短剣を裏返し、目を細めてジッと見たりしている。
それ俺が武器屋で買って、カレンに渡した普通の短剣だが?
「おかしいな……」
「ニャ!?」
「ラリットさん、どうしました?」
何だろうね?
カレンの短剣が刃こぼれしたとか?
「こいつは普通の短剣だ! それも初心者向けの扱いやすい短剣……。いや、悪い物じゃねえが……」
「ええと……。確かにそれは俺が武器屋で買った普通の短剣ですよ。何かありあしたか?」
ラリットさんは、真剣な顔で俺とカレンを交互に見る。
何だろう?
不安を感じる。
「いや、あり得ねえだろう! ヒクイドリはBランクの魔物だ! 確かに首が弱点だが、初心者用の短剣で斬れるもんじゃねえ!」
「ニャ!?」
「あっ!」
「猫の嬢ちゃんもナオトと同じ初心者冒険者だったよな? ジョブは盗賊か? 初心者盗賊が、初心者用の武器でヒクイドリを一撃だあ? ねえだろ!」
「「……」」
「だいたいだな! ヒクイドリはBランクとしては弱い方だが、魔法攻撃は強力だ。アンチマジックシールドや魔法防御に優れた装備を揃えて、レベル40前後のメンバーを揃えたパーティーが戦いを挑む相手だ」
「「……」」
「エルフの嬢ちゃんの水壁も強力だったよな? 一度消えたけど、すぐに水壁を展開していたな? 良い腕だぜ……。エルフは見た目で年齢がわからねえ種族だが……。まだ若けえだろう? 他にも……、とにかくオマエら尋常じゃないぜ!」
「「「……」」」
なんか、これ、不味くないか?
ラリットさんが俺たちに疑問を持っている。
「猫の嬢ちゃんのレベルはいくつだ?」
「ニャ……」
カレンのレベルは40。
神のルーレットで『経験値倍増』で、大幅レベルアップしている。
ラリットさんにレベルの事を伝えれば、『何でそんなにレベルが高いんだ!?』と追及される。
だが、神のルーレットの事は、話したくない。
カレンがちらりと俺を見たので、俺は首を振って『しゃべるな!』とジェスチャーする。
ラリットさんは、ダンマリの俺たちを見て深くため息をついた。
「ふー。わかったよ。何か話せない事情があるんだな……」
「ラリットさん……」
「いや、良いんだ。ナオトは神様と会話したって言うしな。色々と話せない事もあるだろう……」
「すいません」
俺がシュンとして謝るとラリットさんは、俺の肩をバンバン叩いた。
「なあに、良いんだよ! ナオトたちが戦力としてアテになるってのは好材料さ! さあ、十階層へ行ってみようぜ!」
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