夏は夜 ——白夜 最終夜

作者 河原 藍

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★★★ Excellent!!!

『白夜』といえば自分にとってはドストエフスキーのそれだったり、東野圭吾の『白夜行』だったりした。
が、もう戻れない。
これからは、わたしにとって『白夜』といったらもう河原藍だ。

本作は既発表の短編『白夜』をシリーズ化し、4週連続で発表された作品の第4弾。
宮本奎子という女性の視点で統一されたその物語は、時系列が逆になっている。
わたしたちは社会人として働く彼女の姿をのぞくことから出発し、恋の苦い結末からその萌芽へと時計を巻き戻すように見てゆくのだ。

このような構成はたとえば桜庭一樹の直木賞受賞作『私の男』でも用いられている手法であり、読者は結末を知りながらその過去を追ってゆくことになるのだが、それはよほど魅力あるエピソードに緻密に支えられていなければ成立しない。
この構成で成功している時点で、わたしたちは作者の技量を推し量ることができる。

ある程度は作者の実体験なのだろうと思わせるリアリティー、それでありながら自己投影し過ぎず、主人公を突き放したところに生まれる文学性。ご都合主義は徹底して排除されている。
胸をひりひりさせるエピソードの数々は過不足のない表現で語られ、奎子に差し伸べたくなる手をぎゅっと握りしめながら通読した。

本当に河原藍はすごい。
カクヨムをやっていてよかったと、読むたびに思わせてくれる書き手である。