第4話植物図鑑より

この変わった、そして貴重であるとどうじにまた希少な、錬金術師たちにとって、のどから手がでるくらい入手したくなる、植物(その定義のうちにあるのだろうか?この思考し、言葉をつかい、語りかけ、惑わし、ときには人を導く花は・・・)について、わたしが聞き及ぶ限りについて、ここに記しておく。

生息場所は、その雰囲気にふさわしい、世界の果ての果て、お椀状の世界の淵の、さらにその先の闇の奥だという。(どうやったら、そんな話がでまわるのか?まことしやかなデマでは?根拠のカケラすらないのに、なにゆえこれほどに真に迫り、ひきつけられるのだろうか?)

その生態は、とうぜんながら、謎につつまれている。闇は、その花にとっての土であり、水である。根を使ってあるきまわったり、葉を、翼のようにはばたかせて、パタパタ舞うとか。


そこにたどりついた旅人が、その花と対話するうちに、発狂し、寄生されて、生き血をすべてのみほされたとか、種をうえつけられて、苗床にされたとか・・・。(その旅人が一人だったとしたら、このはなしは、何者がもちかえったのやら・・・)


孤立したこの植物の存在を伝えたのは、天使だとする説がある。(悪魔だとする説もあるが?)

あるとき、雲がわれて、稲光とともに、燃えさかる火炎につつまれた、つばさをもった存在があらわれた。その天の使いは、おそれおののく錬金術師たちに、その植物についての知識を授けたらしい・・・。


この植物との対話にうちかち、その本体ないし一部を手にしたものは、欲するがままの物質を生みだせるだろう。


これは、さる匿名の大神秘主義者の残した言葉だ。


わたしは、これ以上のことは知らない。また、あまりにも誇張されたほらばなしと思われるものは、いちいち記録しない。

この植物をもとめる者があるなら、ひとつ忠告しよう、遠くの目標に向かっていくならば、よりいっそう、身近なあしもとの真実を見失わないように。日々踏みつけている雑草一本一本にも、生命と神秘が宿っているから・・・。


    とある世界のとある研究室(窓からガラスでできた温室の見える)にて

    匿名の植物学者記す。

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