第23話 無邪気と純粋、そして悪戯

「ガチで噛みつくなよ……」


 創作ホラーの読み聞かせお仕置きでパニック状態に陥った我らがラスボス大魔女は、それはもう怒った子犬のように俺の指を噛んだ。エルフじゃなくてワーウルフの末裔なんじゃねえの、アイツ。

 しかし俺も大人げなかった。いや精神年齢的にもソフィーのが上なんだけど、あれは外見内面ともに幼女だから。

 最終的にはお互いに謝ってお開きとなったのだが。


「(ぜってー何か別の悪さイタズラを考えてたな)」


 事実として「お互いに隙を見ても突っつかず嫌がらせもしない」という不可侵を結んだのだが、その時あからさまに目が泳いでいた。

 何か企んでいたか、もしくは既に実行しているのか。

 あの後それはもう脱兎のごとく帰ってしまったので、一体何を考えていたのかを知ることはできない。

 だから俺ももう寝てしまおう。


 サマースクールの件があったからなのか、オルアは基本自習で家庭教師が来ることもなくなった。

 元々ゲームだったことと、文化レベル的な意味でも出される自習課題は易しいものばかり。要は毎日暇で暇で仕方ない。

 せいぜい読書するか、もしくは政敵(候補)の内情を探らせることくらい。


 だから明日も何か予定があるわけじゃないので、日の出を拝むまで起きていても問題ないんだけど。


「それだと腐ってた社畜時代と変わらないからなあ」


 というわけで浴場で一風呂浴びて、寝間着に着替えたので寝る準備は万全だ。

 やっぱり柔らかい羽毛布団は最高なんだよ。

 少なくとも作業椅子にクッションを布いただけの粗悪なベッドより。


 そんな当たり前な至福を実感しながら、貴族ひいては王族らしからぬベッドダイブで羽毛布団の魔力に包み込まれる……。


 そう思っていたのだがだったら良かったのに……。


「ふぐう!?」

「—―――ッ!」


 背中に伝わる鈍痛。毒矢でも仕込まれたいたのか、と警戒するがそれよりも布団の中から聞こえてきた呻き声に意識を持っていかれる。


 恐る恐る警戒しながら、布団をめくろうとしてようやく暗殺の類ではないと気付いたのだが。

 実情はそれよりもある意味・・・・最悪だった。


「ぷはぁ! 何? 何なの……!?」

「ええ?」


 ベッドから飛び出してきたのは、ドウテーには些か刺激の強いラフな寝間着を着ている、息苦しさで顔を真っ赤にしたネコミミ・・・・の幼女。


 俺とセリアの間に流れる無言の静寂は、恐らく罵倒されるよりもキツイものだった。

 絶対にソフィーラスボスちゃんを、もっと怖い話でビビらせる。

 加えて決意させるには十分な出来事で、ドタバタな一週間は幕を開けたのだった。

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