第20話 初心と経験不足

「英雄、ですって?」


 お、綺麗に喰いついたな。しかしこれに続く話で彼女は俺にどういった評価を下すか。

 普段生きてて「この世界は創作されたもの」なんて世迷言・・・を話すことは絶対にありえないからなあ。


「まあ大賢者だとかは大げさかもしれないが、魔王ラスボスは確かに倒したぜ。……ゲームの話だけどな」

「はあ? ゲームって、トランプとかのカードゲーム・・・・・・で、ってこと。そんなのお遊びじゃ」

「これから起こること、は不確定要素多すぎるか。まあ少なくとも王国内紛の元凶黒幕は知ってる。それら全てはの世界だと物語だったからな。

 なぜそんなこと事件を起こしたのかまで知ってる・・・・ぜ?」


 圧倒するほどの情報量の畳みかけという暴力。創作やゲームだとか、果ては現在政界を騒がせている黒幕ラスボスの正体まで辿り着いている、などと言われたら混乱するわな。

 ヒロインネコ被った腹黒系ウザ可愛い幼女ことセリアは震える手で紅茶を、貴族とは思えないくらいの豪快な一気飲みで飲み干し、数度こめかみを手で押さえると俺に向き直った。


「あの時言ってた世迷言・・・は信じる。けれど創作ってどういうこと? まさか私まで御伽噺の登場人物だとでも言うの……?」

「そうだ。俺の知る限りアンタは、セリア・ラ・ヴァレンタイン・ビーグ次期王女はコンピューターVRヴァーチャルゲームのヒロインだったよ」


 彼女の顔が驚愕と恐怖、そして怒りが入り混じった感情になる。

 次の手を切るとしたら今しかない。


「私は、誰かの思惑通りにッ」

「ならないし、なってない・・・・・。セリアという女性の政敵や黒幕は知ってるが、現状はもう神が賽子を振った不確定要素多々な運任せ状態だ」


 元よりゲームストーリーと色々食い違ってきている。敵は大雑把にはわかるが、はたして『Silver.get』本編のような人物なのかはわからない。

 救いなのは、なぜかゲームのバグ技がそのままということだろうか。

 ま、今大事なのは技術的チート優位じゃなくて。


「少なくとも俺はアンタを害さない。むしろアンタが望む情報を提供するつもりだ。

 お互いに傷つくことなく穏便に暮らしていくためにも」


 大雑把な未来の情報を引き渡す。その見返りとして不可侵条約を結ぶという取引。

 オルア当て馬とは似てないけど、十分外道なことしてるよなあ。


 そんな俺の持ちかけに対してセリアは。


「情報はいらないし、言われずとも取引・・には応じてあげる。お互い平和に、普通な協力をして暮らしていきましょ?」


 ――と、意外な展開。もっと何か条件をつけてくれるかと思っていたが。


「いいのか? そんな条件で」

「未来を知ったら振り回されそうだもの。……ただ、強いて言えば」

「強いて言えば?」


 カップにお茶を注ぎ、これまった一息で飲み干すと彼女は少しうわずった声で。


「……お、お互いの情報を共有するために、連絡手段でも作らない?」


 それはまるで、初恋の相手からメアドを貰おうとする乙女のようで。

 なんて未来はあり得ないのだろうけど、DTで女性経験が無さ過ぎたから思わず意識してしまい。

 そんな馬鹿げたことを妄想した自分自身を「きもいなあ」と思いながら、互いに文通で週1で連絡を取り合うことが決まったのだった。

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