第14話 死神探偵の事件簿

「やはり殿下、ゲール家、それから……などが疑わしいです。しかし……」

「全員を調べる時間と権限は我々にはない。被疑者であるギルス殿下に頼み込むことなど出来んからな。あくまで事後調査くらいしか」


 武装した鎧騎士に警備された講義堂。その中では明らかに場違いなサン・キュロットの服装を着た男共が腕を組んで今後の方針について悩んでいる。

 オルア・フォン・ヴァレンタインの記憶には彼らの正体を特定できるものはなかったが、それでも「どういった人間」かを察することは可能だ。

 王室に直接謁見する権限を持ち、加えてスパイのように情報を集めることが出来るということは現代日本の公安警察や麻薬Gメンみたいな職の者なんだろう。たしか誰かのサブイベントで似たような人間が出てきたはずだ。

 ただそんな彼らでも「まさかソフィークラスしか知らない大魔法で傍聴されている」なんて事態は夢にも思っていないようで。


 実際に彼女が「本来まずしない傍聴」を行っているのだから彼らが予測・対策「できなくて当然なんだが。


「協力したんだから、そっちも約束を守ってよね! キミが知っているわたしの過去を全部喋るってこと!」

「もちろん。これを今後誰にも話さないという約束も守ってもらえるのなら」


 ソフィーとの交渉において奥の手として用意しておいた「ソフィールートのネタバレ」を使うくらいには今回の件は早急に解明すべき事案だった。帰りたいがために考えないようにしていた「過去が変わることで未来がわからなくなる」というタイムスリップ・タイムリープものでは定番の展開。起こってしまった以上は今後似たようなことが起きた場合に備えて対応プランの骨子を作る必要がある。


 出し惜しみはしない。使える手段は最大限に使う。


「さーて、お待ちかねのゲール兄弟の部屋が見れるよ」


 彼女が使っている魔法、名前は教えてくれなかったそれは特定の場所をライブ中継のように見ることが出来るという代物。『Silver.get』だと「お色気イベント」でしか登場しない舞台装置に過ぎなかったが、よく考えたら推理系だと無敵じゃないかということで劇中で使っていたソフィーに頼み込んだというわけだ。


「王様じゃなくて探偵でも目指したらどう? 露骨過ぎるほどキミの予想通りだったわけだから」

「反則行為をしたんだ。俺は物語の主人公にはなれないよ。ただ責任は取れるよう気張るだけだ」


 そう答えながら準備を進める。チャンスは今夜、セリア救出は奇襲的に済ませ事後処理は翌日行えばいい。囚われのお姫様を助けること自体は難しいことじゃない。問題はゲール兄弟犯人をどう扱うかだ。


 あまりにもお粗末な・・・・ 犯罪を見せつけられながら俺の頭はどんな処分を下して今後に使うかで一杯だった。

 失敗するという不安はない。救出は絶対に完遂する。そう信じていたんだ。


「さて、やるか」


 ……「信じていたんだ」じゃ過去形になって格好がつかないし合ってないな。

 「成功する未来しか見えてない」の方が合ってる。策も講じたし準備も終わってるんだ。失敗を恐れる方が難しい。

 悪役には相応しい似合わない俺だけど、これくらいいいよな?

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