第12話 世界で最も行列を生んだ石っころ

 ……本当にこっからが大変なんだよなぁ(死んだ目)。

 彼女は俺の話を信じてくれるし協力もすると言ってくれた。問題はどこまで"本気"になってくれるかということだ。

 ソフィーは極めて飽きっぽい。彼女の名を世間に知らしめた「魔法」という分野でさえ主人公と付き合った際には躊躇なく捨てる。


 少女はこの世界にたった一人だけとなったエルフだ。育てるはずの親も同年代同郷の友人もいない彼女は孤独に苛まれていた。だからこそ心を満たしてくれる何かを強く欲してたのだろう。魔法の前は剣の腕、その前はモンスター、始まりは音楽とソフィーの人生は「楽しく心を満たしてくれるもの」に熱中することが全てだったのだ。

 そんな人生に永遠に飽きない変化を与えるのが主人公というのがソフィールートの大まかな内容で、彼女は主人公と結ばれる際に躊躇なく「魔法」を捨てている。


 つまり魔法がソフィーの全てというわけではない。すぐに興味を無くすということはないだろうが、それでも目的を達成するまで好意的にいてくれるか。

 知っていることの全て話す。けれど「一度」にすべてを話すわけではない。

 情報を小出しして少しでも長く興味を持ってもらう。これで行こう。


「キミの話に凄く興味がある! さあ話してくれキミの生きてきた世界・・・・・・について!」

「わかっている。質問形式で答えよう。あと1時間だけしか今日は時間が割けないが、それでもいいなら存分に聞いてくれ」


 それを聞くとソフィーはまるで誕生日プレゼントを買って貰う玩具を悩む子供のように聞きたいことを思い浮かべているようだ。


 さてサマースクールは残り4日もあるのだから疲労を回復させておかないと。

 現代の科学については、後に取っておこう。それが彼女を一番惹きつけるものだろうからな。


「思いついた。今日はこの質問一つだけにしておくよ。『そこは人が星空にたどり着ける世界だった?』」


 あまりにロマンチックな質問。星空は「宇宙」を表しているのだろうか。けれどこの質問は現代日本に生きる者なら誰でも答えられる。


「星空を越えて月にまで降り立った。"俺"が生まれる80年以上前にね」


 アポロ11号の着陸船イーグル号が月面『静かの海』に着陸したのが1969年だったはずだ。確かこれで合ってたはずなのだが。

 そんな呆気なく、しかし計算に関してやや不安を感じながらも告げられた答えにソフィーは満足そうな笑みを浮かべる。


「ならますますキミに協力して知識を得ないと」


 少女が一体何を思い描いたのか。この時の俺には知る由もなかった。

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