第7話 孤独兎は甘い夢を見るか?

「つまりは自然魔法工学に置いて魔法と地脈には因果関係はないと、ティオネード卿は魔力の人体・地脈由来理論論争に終止符を打ったということです。現在ではティオネード論と呼ばれていることから……」


 屋敷の大講堂、午後からは座学ということで王宮お抱えの学者様から歴史についての授業を受けているのだが……。やっぱり視線が気になる。

 あれだけ暴れたら当然注目されるよな。これからはパニックにならないように注意しないと。表面上は冷静に見えても内面が混乱状態だったらあれ以上の大問題が発生しかねないのだから。


「それでは、今日の座学はここまでです。お疲れさまでした」


 白髪の多い初老講師は一礼すると足早に部屋を出ていく。それを見届けると授業を受けていた者たちも逃げるように出ていった。俺と一緒にいるのが怖いんだろうな。

 俺だって彼らの立場だったら逃げたくなるよ。……はたして滑稽な最期を回避できるのか? なんだかヒロインじゃない別の人間に殺されそうな気がする。


「(さて、夕餉まですることがないな)」


 窓の外を見るともう日が沈んでいた。子供の体力だと半日ずっと本に向き合うだけでも疲れる。ゲーム内で語られていたギルスのオルアでは、彼はサマースクール中ずっと、あの取り巻き(になる予定だった)と共に授業に出ず好き勝手していたらしい。


 王位継承が現実的である彼に反抗出来る者は幼少期の頃から一人もいなかった、と聞いていたが実際にソフィーと言い合いをしていた時に俺を注意する人間はいなかったことからも、彼はある意味ずっと孤独愛を知らないだったことを思い知った。というかあの取り巻きが2日目の晩餐会で本格的に取り入ったとなっていたから、出会った人間は殆ど彼に従順していたのだろう。


 オルア・フォン・ヴァレンタインは構って欲しかったのかもしれない。だからといって横暴が許されるわけではないが、誰一人として親しい者がいなくて、その果てにあの最期を迎えるのだと知ると感じるものがある。


「そうならないように頑張るしかないよな……」


 本を抱えて俺も私室に戻ろうと講堂を出ようとしたその時だ。


「あのオルアさま、お時間よろしいでしょうか?」


 扉を開けて待っていたのは、この身体になって初めて会った少女。俺より数か月ほど後に生まれた猫耳姫セリア・ヴァレンタインが緊張した表情で俺に話しかけたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます