第5話 GWに向けて:2

次の日、俺は五十嵐と肇達のいるところに向かい、昨日の話をする。


「という事で、五十嵐を誘っておいた」

「え……」

「え!?」


 みのりは呆然として、また五十嵐も驚いていた。

 それもそのはず。五十嵐は誘ったわけじゃないし、みのりは唯一振られたことを知っているからだ。

 だから、五十嵐は別に良いとして、みのりには説明しなければならない。


「みのり、ちょっと良いか?」

「あ、うん」


 みのりを連れて、廊下へと出る。


「驚いているかも知れんが、さっきはああ言ったけど、別に俺が誘ったわけじゃなくて五十嵐から私も行きたいって言ってきたんだ」

「そうなんだ。……彩人は平気なの?」


 彼女は、まだ俺を心配していてくれるのだ。気まずくないのかと、一緒に行っても楽しめないんじゃないのかと。

 必要以上には聞いてこない。平気なのかという一言に全て要約されている。

 だからこそ、ここは俺がちゃんと説明するべきだと思った。


「俺は、もう五十嵐のことは好きじゃない。もう終わった事なんだ」

「そうなの? そんなにすぐ諦められる事なの?」

「俺はもう友達としての関係が気に入ってるんだ。諦めたというか、いつまでも後ろばっかり見てられないんだよ」

「それって……」

「まぁ、そういう事だ。だからなんも心配しなくても良い。問題ない」


 みのりは少し嬉しそうだった。


「わかったよ。彩人がそう言うなら大丈夫だね」

「おう。じゃあ教室戻るか」


 教室に戻り、先ほどの話に戻る。


「待たせて悪いな」

「えーくん、みのりちゃんと何話てたの?」

「お前には全く関係ない話だ」

「あの……私はやっぱり邪魔だったかな……」


 しょんぼりしながら聞いてくる五十嵐に、みのりがすぐさまフォローする。


「あ、違うよ! 全然良いよ! むしろウェルカムだよ! 彩人と話してたのは、旅館の話だから!」

「あぁ、旅館な! みのりも知ってる人だから、もし俺がなんか言われたらフォローしてくれって話だ」

「そうなんだね。よかった!」

「んじゃあ、話に戻ろうか! 杏ちゃんと蓮くんはどうだった?」

「良いよってさ!」

「こちらも同じく」


 杏もオッケーだったか。

 俺が知ってるあいつは本を読みながら、いつもニヤニヤしているイメージだ。それを指摘したら本の角でぶん殴られた事を思い出す。

 髪の毛が鬱陶しいのかいつもポニーテールをしている。切ればいいのに。


 それにしても、蓮も杏も来るとは意外だった。普段、外とか出るイメージ無いし。蓮とか遊びに誘ってくれないもん。

 いつも誘うのは俺だ。というか、今回も誘ったのは俺だったな。よく考えれば、誘って断られなかった事ないや。蓮ってばいい奴だな。

 とりあえず人数は六人に決まったことだし、今から蓮と杏も呼ぶか。蓮はそこで寝てるし、起こせば良いだけだけど、杏はもう帰っちゃってるかな?


「みのり、今から杏呼べるか?」

「学校にいれば多分きてくれると思うけど、ちょっと電話して来るよ!」

「じゃ、俺は蓮を起こして来るよ」


 そのまま蓮の席に向かう。すると、


「七里! 五十嵐! ちょっと来い!」


 なんか既視感あるぞ。昨日より口調が強めだ。呼ばれる理由はわかっている。

 昨日のメモのことだろう。それ以外に呼ばれる理由がない。

 なぜ、五十嵐まで呼ばれたかはわからないけど。


「おーい、五十嵐。先生に呼ばれてるぞー」

「アヤトくんも呼ばれてるじゃん! なんか先生怒ってない? 絶対昨日の事だよ!」

「まあそうだろうな。気楽に行こうぜ」

「なんでそんな余裕なの!?」

「慣れてるからこういうの」

「慣れないほうがいいんじゃないのかな?」

「怒られるのは俺だけだ安心せい。肇ー! 代わりに蓮起こしといてくれ」

「あいよー! えーくんも懲りないねぇ!」


 先生の所にたどり着くと、なぜか俺だけ首根っこを掴まれ廊下につまみ出される。五十嵐も一緒に苦笑いしながら出た。


「七里。なんでこういう状況になっているのか分かるか?」

「メモっすね。メモ。ドキメモ」

「恋愛シュミレーションゲームじゃねぇ!」

「お、よくわかりましたねぇ! 先生もやればできるじゃん。100点あげる」

「この口は! 次から次へと!」

「いひゃい、いひゃい」


 口を掴まれ、引っ張られる。五十嵐はというと終始苦笑いだ。

 おい! 苦笑いしてないで助けてくれよ!

 視線で五十嵐に訴えていると、目が合う。しれっと逸らされた。逸らすなよ。


「いがらひぃ! うらひるなぁ!」

「うるさい、何言ってんだ。あのメモのせいで他の先生に笑われたんだぞ!」

「あー、痛ってー! 頬っぺた引っ張んのはやめてくだせー! 笑われたとか知らんし、そもそも汚いのが悪いでしょ!」

「五十嵐! 君も何故こいつを止めなかったんだ! 一緒にいたんだろう」

「いましたけど……でも先生の机、本当に汚いですよ」

「っな!」

「ほれみろ。こんなとこで説教してないで机片付けてきたらどうですか?」

「私もそう思います」

「い、五十嵐まで!?」


 先生は五十嵐にも言われるとは思ってもみなかったみたいで、しょぼくれてどっか行った。


「アヤトくんってさ、先生に対していつもあんな感じで接してるの?」

「ん? あぁ。そうだよ。いつもあんな感じ」

「すごいね。私にはできないや」

「でも、五十嵐のおかげで助かったよ。サンキュな」


 教室に戻ると、みんな揃っていた。


「悪い、待たせたな」

「じゃあ全員揃ったことだし、話を進めますよ!」


 そこから肇は日程から話し始め、交通手段は新幹線。七時発くらいの早めの新幹線を肇が確保してくれるそう。

 宿泊場所は俺の親戚のやってる旅館と説明した。まだ決まってないし、空いてるかも分からんのに。

 心配だったのは金銭面だったが、みんな貯えているそうでよかった。

 1日目は、グロスタという大阪のテーマパークにいき、2日目は大阪観光するというざっくりだがおおよそは決まった。

 あとは俺がなんとか旅館に泊まれるよう交渉するだけだ。今日中に決めてくれと念を押された。まあやるだけやってみますか。

 


*****



 あれから家に帰り、早速だが薫さんの旅館に電話しようと携帯を手に取る。

 あ、あれ!? て、手が震えてる。これは拒否反応が出ている。本能が掛けたくないといっているでござります!

 だけど、ここで掛けなかったら何を言われるか分からない。仕方なく俺は電話をかけた。


『はい。お電話ありがとうございます。都築旅館でございます』

「あの七里彩人と申します。都築薫さんはいらっしゃいますでしょうか?」

『かしこまりました。少々お待ちください』


 保留音が流れてくる。手汗が半端なく、異常なほどびしょびしょだ。めっちゃ緊張してきた。こえーよぉー!ままぁーん!


『もしもし、お待たせ。久しぶりだね、彩人。なんか用事でもあった?』 

「薫さん、お久しぶりです。あのぉ、急で申し訳ないんですけどぉ、連休の初日から一泊二日でお安く泊まれないでしょうか?」

『はぁ!? 何言ってんだ! お前バカだろ』

「で、ですよねぇ。無理ならいいですよぉ」

『あーもう! ちょっと待ってろ!』


 あれれ、意外と親切だな。口調は強いけど、優しいなぁ。


『もしもし、待たせたね』

「全然大丈夫です」

『一つだけ部屋空いてるんだけど、人数は?』

「六人ですね」

『男女の比率は?』

「3:3です」

『じゃあ、丁度いいね。間仕切りがあるからそこ閉めて、別れて寝れば問題ないね。しょうがないから予約としていれといてあげる』

「え、いいんですか!?」

『ちなみに値段はいくらで泊まりたい?』

「値段ですか……そうですね。やっぱり高校生なので、安ければ安いほど嬉しいんですけど」

『じゃあ……しょうがないから無料タダでいいよ』

「マジですか!? ありがとうございます!」

『久しぶりに会えるし、女の子ってみのりちゃんもいるんでしょ? サービスしてあげる』

「本当にありがとうございます」

『んじゃ、当日よろしくねー。旅館に着いたら私を呼んでね』

「こちらこそよろしくお願いします。ありがとうございます」

『はいはいーじゃあねー』


 なんか案外すんなり決まったな。

 もっと怒られるかと思っていたけれど、最初の一言だけであとは普通に優しかった。


 し・か・も! 無料でいいって! すごい太っ腹だよ! 

 本当にいいのだろうか。なんかトントン拍子に話が進んでって、怖いんだけど。

 とりあえず肇にメールだけでも入れておこう。

 メールはすぐ返事が来た。


『ありがとー! さっすがえーくん! 頼れるねぇ! 新幹線のチケットはこっちで買っておいたから、当日にお金は回収するから。行き帰りで2万だからよろしくね。皆んなには俺から伝えておくから!』


 仕事はやっ! てか宿泊できるかわからん状況でよく買ったな。

 6人分って12万だぞ。相当金溜め込んでるな。


 でもこれでゴールデンウィークは楽しめそう。


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