第145話 魔力0の大賢者、の妹達と魔狩教団

 やはり相手は魔狩教団でした。しかも第5位だとマレツを名乗る男は名乗っています。

 

 お兄様が以前相手した相手も魔法を切ることが出来たらしいです。尤もお兄様の魔法までは切れなかったらしいですが、この男は私達の魔法を難なく切ってしまいました。


 おそらくは背後で控えている男も似たような力を持っていると見るべきでしょう。ですが、とりあえずはマレツという男が1人で私達を相手するようです。


 完全に舐められてますが、それならそれで構いません。相手がこっちを舐めているなら私達は全力で立ち向かうまでです!


「……ネガメ、今すぐ冒険者ギルドに言って応援を呼んできて」

「え? 僕だけここから離れろってこと?」

「……そう。急いで」


 戸惑うネガメくんへ、更にアイラさんが続けました。するとネガメくんが肩を落とし。


「そ、そうだよね。僕はこの中じゃ一番の役立たずだし……」

「……違うそうじゃない。勘違いするな」


 少々卑屈なセリフをネガメくんが吐き出してしまいますがすぐにアイラさんが否定しました。


「……鑑定魔法が使えるネガメは洞察力も優れている。この中で今の状況を一番正確に伝えられるのはネガメだけ。適材適所、この役目はネガメだから任せられる」

「ぼく、だから?」

「そうだぜネガメ! 大賢者マゼルの考えだって察することが出来たお前ならこの役目にぴったりだ!」


 モブマンくんもアイラの発言に倣い、ネガメくんの肩を押します。


「私もそう思います! それにネガメくんは説明も上手ですから、より相手に事情を理解してもらえるはずです!」


 私もネガメくんが役立たずなんかではないことを伝えるために、彼の良さを混じえて伝えてあげました。


「う、うん! わかった。ごめんねいじけたようなこと言っちゃって! すぐに行ってくるよ!」


 どうやら納得してくれたようです。ネガメくんが駆け出そうとしますが。


「馬鹿が、1人も逃がすかよ!」

「……閉じ込めよ岩の監獄――ロックプリズン!」


 ネガメくんが離れようとしたところでマレツの目つき変わりました。狩人のような目をネガメくんに向けていましたが、察したアイラさんが魔法を行使。地面が岩に変化しかと思えばマレツを包み閉じ込めました。


 これはまさに岩の牢獄とも言えそうですが。


「けっ、効かないな」


 しかし、その岩もあっさりと切り裂かれてしまいました。


「……確かに切られた。でも逃げる時間稼ぎは出来た」

「は、はい!」


 ネガメくんは上手くここから離れたようです。もう1人のダンゼツというのが動いたらどうしようかと思いましたが、まだ静観を決め込むつもりのようです。


「1人逃したが……ま、いいさ。お前らのほうが殺しがいがありそうだしな」


 剣を構え、ニヤリと不気味な笑みをこぼしてきました。


 魔法を切られるのは厄介ですが……相手は接近戦しか手がないように感じられます。それに1発が対応されるなら――


「数で勝負あるのみです! 我は放つ無刃の風――エアレイドスラッシュ!」


 杖を目標に向けると、周囲に生まれた風の刃がマレツに向います。その数は12,軌道もそれぞれが変化をもたせ様々な角度から目標に襲いかかるのです。


「あめぇよ!」


 ですが、マレツはそれを全て切り裂きました。とんでもない速さの斬撃で。


「先ずはお前か!」


 そして私目掛けて疾駆してきました。足も速い!


「……させないストーンウォール!」

「だから無駄だって言ってんだろう!」

「……くっ!」


 アイラさんの魔法でマレツの進行方向上に石の壁が出来ました。ですがそれもあっさり切られ、かと思えばすぐ目の前まで迫ってきています。


「俺を忘れてもらっちゃ困るぜ!」

 

 ですが、モブマンくんが割って入ってくれてマレツの剣戟を受け止めてくれました。


「あ、ありがとう!」

「何いいってことよ」

「生意気なクソガキだな!」


 マレツが続けざまに剣を振ります。モブマンくんが手持ちの剣で防ぎますが、大きくふっとばされてしまいました。


「お、俺の強化魔法が――」

「強化していようが俺の剣を食らえば切れるんだよ!」

「アイアンナックル!」

「何? チッ!」


 マレツの目が再び私に向けられましたが、アイラさんの魔法で生まれた鉄の拳が上から降ってきたことで飛び退いてくれました。


 あ、あぶなかった……。


「メタルジャベリン!」


 アイラさんの錬金魔法は続きます。金属の槍が何本も射出されマレツに襲いかかりました。


「フンッ!」

 

 ですが、槍は尽くマレツによって切られてしまいます。


「チッ、厄介すぎだろあいつ」

「……モブマン大丈夫?」

「あぁ、直接は切られなかったからな。だけど、あいつあれでまだ遊んでる雰囲気あるし腹が立つよな」


 苦虫を噛み潰したような顔でモブマンくんがいいました。確かにマレツにはまだまだ余裕が感じられます。


「一体どう攻めたら……」

「……やりようはあると思うんだけど」

「う~ん、そもそもあいつなんでアイラの魔法は切れるんだ?」

「え~と魔法が切れるからかな?」

 

 不思議そうにするモブマンに答えます。ただ、理屈は私にもわからないので自信が持てないですが。


「だとしてもアイラは物を生み出しているわけだからな……」

「あ……」


 言われてみれば確かにそのとおりです。錬金魔法で生み出されたのは物体なわけで、魔法が切れるから切れるってわけでもない気がします。


 それでも切るということは……


「……そうか。モブマンナイス。打開策が見つかったかもしれない」

「え? 本当ですかアイラさん!」

「……ん、そしてモブマンの力が必須」

「マジか! だったら俺は全力でやるぜ!」

 

 そしてアイラさんが私達に作戦を伝えてくれましたが、そういうことだったのですね!


「……あと1つ気がついたことがある、それはラーサの力が不可欠」

「は、はい!」

「ふん、話し合いは終わったかよガキども」


 マレツが私たちをみてほくそ笑みました。心底舐められてますね。


「我は願う岩の創生、錬金魔法――ロッククリエイト」


 アイラの魔法に寄って大きな岩が周囲に生み出されました。


「……そんな岩なんかでどうするつもりだ?」


 岩は地面に置かれただけです。それを怪訝そうに見るマレツでしたが。


「こうするんだよフンッ!」


 モブマンくんがその岩を持ち上げました。かなり大きくて重たい岩だと思いますがモブマンくんは魔法で肉体を強化してますから持てるのです。


「オラッ! オラッ!」


 そして持ち上げた岩をマレツに向けて投げつけます。


「あん? また偉く原始的な方法で来やがったな。だが無駄だ岩だろうと魔法で生まれたなら切る!」


 マレツが剣を構え、モブマンくんが投げた岩を切ろうとしています。ですがアイラさんの予想があたっていたら――


「それは切れん! 避けろマレツ!」


 ですがその時、ダンゼツが叫び声を上げました。


「何? チッ!」

 

 それに反応し、マレツが岩を避けました。ダンゼツの顔が険しいものに変わります。


「馬鹿が、魔力が通っているかどうかも見極められんのか」

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