第五話 このままデブだけを奪い去りたい

 客間に通されると、デイビット鷹倉は思わずほう、と感嘆の息をついた。


 女神の住まいというから豪華絢爛ごうかけんらんな装いを想像していたのだが、そんな幻想は即座に打ち砕かれる。だが、ある意味この光景は想像通りと言ったほうが良いのかもしれない。


 ガレージから手を引かれてたどり着いたのは、なんとも雰囲気の良いアメリカンなバーだった。バイカーズBARとでも言えば良いのだろうか。広めの暗い空間には、先ほどの魔改造バイクと引けをとらないモンスターマシンが飾られている。


 どこから手に入れたのか、様々なポスターやネオン仕掛けの壁がけがいたるところにあって、そういう店ですよと言われたらすんなり納得しそうなほどの完成度だった。


 奥にはバーカウンターがあり、その背後にはバーボンやら何やらがズラッと並んでいる。バーカウンター手前には無垢一枚板テーブルとベンチがあり、一〇〇キロ超えのデブが座っても安心の設計だ。


 壁がけの薄型テレビは大きく、そこには何故かサッカーでもアメフトでも野球でもなく、相撲中継が流れている。どうやって電波を受信しているのかサッパリ解らないが、とりあえずこれは彼女の力ということでデイビット鷹倉は納得した。


 彼女用の赤い革張りソファーがあったが、これはパーソナルスペースだろうと遠慮して客用のベンチに座る。しばらく待っているとバーカウンターの奥、バックヤードの暖簾から出てきたのは革ジャケットを脱いだ女神エーオースだった。


 バイクを運転していた時に束ねていた髪留めを取り、今はウェーブの掛かった虹色の髪をおろしている。暗い部屋の間接照明がそれを跳ねて、不思議な燐光を浮かび上がらせていた。


「ああ、そんな所に座らなくても。貴方はそこのソファーに座ってくれてもいいのに」


「この体重だ。壊しても悪いからな」


「ふふ。謙虚けんきょなのね勇士。いえ、デイビット鷹倉」


 そう言って「ビールは?」と聞いてきてデイビット鷹倉が「何でも良い」と言うと、小瓶に入ったビールを持ってきた。そしてデイビット鷹倉の横にピッタリとくっついて、それを手渡す。


「貴方が英雄の器になったことを祝って」


「あとは、俺達の出会いに、か?」


 デイビット鷹倉としては救ってくれた縁、くらいの意味だったのだが、女神エーオースは早くも勘違いしはじめる。思春期の男子中学生のように目まぐるしく想像を働かせ、「ええ、乾杯」と努めて平静を保っていたが、その頃にはもう彼との子供が出来ているところまで妄想を働かせていた。


 デイビット鷹倉は出されたものを疑わずにグイッと飲み干す。一口で炭酸の入ったビールを飲み干すとは流石である。しかもゲップの一つも出さないのだ。


「うまい。あの世のビールとは、生きていた時とそう変わらないのだな」


「ふふ。実際コレは地上から取り寄せてるの」


「……まさか」


「信じられないかしらね。でも、地上は意外にあなたたち人間が知りえない神秘がたくさんあるわ。例えばおいたして堕天しちゃった天使とか、妙に正義感のある悪魔とかが地上でブローカーやってたりね」


 追いやられた連中が天使も悪魔も垣根を超えて仕事をしている、ということなのだろうか。そうであればなるほど、死後の世界、即ち天界との絶対的な壁を超える仕事はかなり重要な仕事になるはずだ。


「貴方の好きなものも取り寄せられるわ。ピザがいい? お肉がいい?」


「いや、今のところ『何故』と『不思議』で腹いっぱいだ。特に貴方が気になってしまって」


「え、私に興味を持ってくれるの!?」


「勿論だ。こんなステキな部屋に通してくれる、俺好みの女がいるとしたらこれ以上の幸せはないだろう」


 いい雰囲気になる……かと思いきや。あんまりにも人と離れていた女神様は一周回ってウブになってしまい、もう色々と耐えられなかったようで感情がオーバーフローした。ようするにプチ暴走である。


 一瞬のことではあるが、想い人が横にいながら「よぉぉぉっしゃあああああああ! ちゃんと美しい女神出来てんぞおいしょおおおい!」と腕を振り上げて最上級のガッツポーズをしていた。


 デイビット鷹倉は漢である。多少の奇行くらいは目をつむる程度の度量は持ち合わせている。彼女がそれをした、という事を悟らせないように、ごくごく自然な形で視線を周囲に巡らせていた。


「ただ」


「ただ?」


「いや、済まない女神様」


「私のことは気軽にエーオースって呼んで。貴方のこともデイブって呼びたい」


「俺と君とでは格が違う。新参者でも解る。ここにいるならわきまえるものだと、俺は思う」


「気にしないわ。私はそもそも、誰にも祀られないただの神。貴方の器のほうがまだ大きいわ」


「しかし」


「いいのよ、デイブ」


「なら言葉に甘えよう。なあエーオース」


 名前を言われて「ちょ、ちょっと待って! ほら、もう一杯いるでしょう?」と席を立つ女神エーオース。その実、興奮しすぎて鼻血が出てしまい、こんな姿を彼に見られたら大変だとカウンターへ向かう時に眉間にシワを寄せ、最大級の治癒魔法で鼻の粘膜に活をいれた。


「ほら、もう一杯」


「ありがとう」


 慌てていたので王冠付きのまま出してしまい「あっ」と叫んでしまう女神だが、デブの指の力は尋常ではない。例えトラックに轢かれたとしても焼き鳥は離さない強烈なピンチ力指の力は、少し擦るだけで簡単に王冠が弾け翔んだ。


 何のことはないと、クイッと瓶をあおるデイビット鷹倉に、女神はもうメロメロになって倒れそうだ。


「俺は、やはり死んだのか?」


「……ええ。でもその死に際はまさに英雄だった。貴方は知る由もなかった事だけど、世界中が貴方の死を悼んだ。デブだとバカにされていた人たちは、みんな暗い部屋から立ち上がったわ。貴方は英雄よ」


「そうか。俺の武は、ある意味完成したのか」


「貴方の武?」


「俺の武の完成は、心がやせっぽっちの連中に、幸せをはらいっぱい食わせることだ。そこには拳も技も何もない。そんなものは馬鹿らしくなって、ただただ人が笑う――夢物語だろうか」


「そんなことはない。夢物語だとしても、貴方は現実を見て実現した。貴方がリングに立ったのも、闘いで人々に幸せを配るため。貴方のようなステキな体形でも、何でもできるという事。ぽっちゃり系に等しく人権があるということ。貴方は戦うことで同胞を救っていた」


「八百長だ、あんなデブが動けるはずがないとも言われたけれどもな」


「やっかむ人には言わせておきなさいよ。貴方はを全て払い、努めて武に真摯しんしだった。僻むこと無く、羨むこと無く。貴方はずっと高潔こうけつだった」


「そうか」


「そう。貴方の事をずっと見ていたから」


「光栄だ」


 言葉とは裏腹に、涙がつつ、と流れるデイビット鷹倉。人によっては死を目の当たりにして喚き散らすこともあるはずなのに――この超常的な場においても、デブはその腹のように泰然たいぜんであった。故に、その一粒の涙には万の言葉が詰まっている。


「はぁ、本当にステキ……(もぅマヂ無理。神格化けっこんしょ)……」


 数千年ぶりのガチ恋愛に、出会ってすぐに面と向かって結婚しよう、なんていえる度胸もなく。テンパリまくった女神は、とりあえずすぐに口を一文字に結ぶと、何億回も練習した女神スマイルを想い人に向ける。


「ふう。しめっぽいことはこれくらいにしよう。エーオース」


「な、なにかしらァ?」


 やっぱりテンパったようで声が上ずってしまう女神。デイビット鷹倉はそんな小さなことは気にせず、コト、と小瓶を静かに置いた。


「俺にさせたいことがあるんだろう? ただただ、貴方の好みでここにわざわざ呼んだわけでもあるまいに」


 いやぶっちゃけそれでもいいし、何なら今すぐベッド・インしても良いんだけど……という言葉は女神のプライドに反するようだ。「ええ、先にシャワー浴びてるわ」という言葉を本当にギリギリ飲み込んで、女神エーオースはパンパンと頬を叩いて気合を入れ直す。


「つれないのね。暗い部屋に、男と女が二人よ?」


 でもやっぱり駄目だった。もう何千年もご無沙汰な欲求はついつい口をついて出てしまうようだ。実質処女ビッチである。


「貴方に言われれば肌も重ねよう。だが仕事があるなら、済ませておきたい。それに、女神の肌に触れるというのなら、試練を超えてからが古からの慣例だと思うのだが」


 なんだこのストイックな漢は!


 ええいじれってえ!


 ちょっと私、脱いでいやらしい雰囲気にします!


 もうメッチャクチャにしてくれ!


 ……と言いたいが、女神はやっぱり我慢する。ロマンティックな大人の世界は、まず男からエスコートすること。自分から安く差し出すなどあってはならない――という、女神おんなのプライドは世界樹スカイツリーよりも上にあるのだ。


 でも体があんまり我慢出来ないようで、推定Gカップの豊満な胸を腕にピッタリつけ、熱くなった吐息をついついかけてしまう。


「うふ。ちょっと待ってて。その試練を今用意してくりゅぅ」


「準備が必要なのか?」


「そう。ちょっちょまっちぇ」


 語尾がふにゃりとなった。限界だ。


 女神の脳奥深くからレッドアラートが鳴り響いているトキメキが止まらない。「もうアカンで、もーアカンでこれは辛抱たまらんばい!」……と、女神エーオースは火照った身体を抱えてトイレに直行する……ここからは察してほしい。それが配慮というものだ。


 二十分ほどたってようやく落ち着いた彼女は、弥勒菩薩みろくぼさつかくやといったアルカイック・スマイルで「ふぅ……」とため息をつくと、再びデイビット鷹倉の横に座った。


「おまたせ。早速だけど、貴方には世界を救ってほしいの」


「俺はタダの人間だが」


「ええ。でも英雄よ。その御霊みたまは神に匹敵するもの。だから必要なの」


 女神エーオースはそう言うと指を打ち鳴らす。瞬間、テーブルの上にブワリと丸い映像が浮かび上がった。


「何だこれは。ホログラフで映し出された……地球?」


「そう。けれども厳密には違う。この世界はマサマ=モンドって呼ばれた、捨てられるべきだった平行世界なの」


「平行世界? パラレルワールドってやつか」


「そう。貴方の国のメディア作品なら、異世界、とも言える場所かもしれない。多くの場合、今ここにいるから分割して生まれて――ほとんどが滅び去るの」


「もしもがあった世界だからこそ、たどり着く答えにたどり着けないということか?」


「言い得て妙ね。この基準世界は数々のブレイクスルー人類危機を超えて成り立っているの。その切替ポイントに失敗して、バッドルートに入ったのが見捨てられた世界。でも、時々とんでもない変化と反映をするものもある。その一つが、これなの」


「これが」


「この世界は太古に神々が全部持って帰った魔法が現存して、そのまま伸びた世界なの。笑わないで聞いてほしいのだけれども……エルフとか、ドワーフとか。そういう人種が普通にいるわ」


「それは、また、スケールの大きい話だ」


「ええ。でも、基準世界には彼らは存在していない。正確にはいることはいるんだけど、滅亡一歩手前。なぜだか解る?」


「いては世界の都合が良くなかったから、か?」


「あたり。淘汰とうたされるべき人種。交わることのない生き物。普通なら玉ねぎの皮のようにどんどんと切り捨てられるんだけれども、このマサマ=モンドはそうじゃなかった。全ているという微妙な均衡きんこうを奇跡的なバランスで保ち続けているの」


「そういう世界は他にもあるのか?」


「あるわ。時々ふとした時に転がってくるの。何千何万何億の果ての分割した世界。運が良い世界は、私のような神様に拾われる。そして擬似的な創造主デミウルゴスとして君臨して、自分を世界に紐づけするの」


「見えたぞ。貴方はその力で神格……というか判らんが、そういう力を確保したいのだな?」


「半分当たり」


 エーオースはくい、とビールをあおる。


「誤解のなきようにだけど。別にこの世界のリソースをまるまる使って神界に華々しく再デビュー、なんてのは考えてないの。ただ」


「ただ?」


「私、のぞいちゃった。この世界の素晴らしさ。基準世界に引けを取らない可能性の暁。そんな面倒事捨てなさいよってヘリーオス暑苦しいクソアニキセレーネー萌キュンラブラブマイシスターに言われたけれど……」


「貴方は捨てられなかった」


「ええ。そう――そして、ここからが本題」


 エーオースはきゅ、とデイビット鷹倉の腕を掴むと、意を決したように手をふわりと上げる。次の瞬間、世界には黒い楔のようなものが五つほど穿たれた。


「どの神様もそうだけど、消えゆく世界を維持するには己との紐づけとしてくさびを打つの。それは世界にある幸せを増幅・循環させるもの。私はこの世界に食を紐づけて、食選器しょくせんきと名付けたわ」


「なぜ食に?」


「この基準世界にも聖遺物せいいぶつやら願望を叶えるという神々の装置英雄の雁首揃えたゴチャマンの景品で『杯』を象ったものが多くあったでしょう? だいたい神様はそういうのを紐付けるのよ。口から入って循環して、地に還って巡らせる。なら、口に触れるものが効率は良くない?」


 わかったようなわからないような。ただデイビット鷹倉は最初から考えの及ばぬことが多いと割り切り、女神の言う食選器=幸せ循環器とやや強引に落とし込んだ。


「そして、時折これを見つける人間がいる。多くの場合は私利私欲のために使うけど、中には悪知恵が働いて悪用する住人がいるの」


 そう言うと、目の前のホログラフ動画は楔を中心にして真っ赤に染まる。やがて赤が世界をおおうと、次には世界がボロボロと崩れていった。


「これを放置してしまうと、世界に均衡が保てなくなる。それが今、この世界に五箇所兆候が見えるの」


「しかしながら、神様自身がここにおもむくことができない?」


「理解が早くて助かるわデイブ。貴方の言う通り、貴方と私は確かに格、というよりも存在の階層レイヤーが違う。この世界に顕現けんげんしてしまうと――おそらく、マサマ=モンドは一瞬で崩壊する」


「危ない話だ」


「そう。だから同階層レイヤーの存在を派遣するの。例えば……そうね、知っていたらで良いんだけど、ほら、貴方の生前の世界で神様はどうやって神託を伝える?」


「日本昔話なら、何かを遣わしてだな。鳩かウサギか。はたまた尾長鶏か。あとは人間の女か」


「そう。西洋の宗教なら、ギリギリ同階層レイヤーにいる天使とかはあそこに顕現できる。大きくくくって、ああいう連中を神使みつかいっていうわ」


「読めたぞ。あの無頼バカ達が血眼になって英雄の器を集める理由が。基準世界に何かをもたらす尖兵鉄砲玉にする。そういうことだな?」


 その言葉に、エーオースは「是」という顔をしたが、同時に悲しそうな顔になった。


「私は決して貴方を尖兵鉄砲玉にするつもりはないわ。あ、貴方のような素敵な人を絶対!」


「……すまない。言葉が悪かった」


「ご、ごめんなさい。興奮しちゃって」


「いい。皆まで言わなくていい。ようするに、俺がこの世界に乗り込んで、悪いやつをぶっ飛ばし、楔の問題を解けば良いのだろう?」


 まとめればこういう事だ。


 消えゆく世界を維持するため、神は楔と称した循環器を打ち込む。


 だがそれは時折その世界の住人に見つかり、悪用されてしまうこともある。


 それが続いてしまうと幸せの循環にエラーが生じ、世界は一気に暗黒に呑まれる。


 だが、問題を解決しようと上階層レイヤーの神が直接顕現することは世界崩壊を意味する。


 故にその世界の同階層レイヤーの英雄を神使として派遣することで、問題を解決しようというのだ。それが、デイビット鷹倉の役となる。


「――けど、これは貴方の言う試練に相当するわ。失敗すれば間違いなく死ぬの」


「ほう?」


 女神は少しだけトーンを落として、言葉を続ける。


「私は大手のように他の神使がいないわ……そして神使が世界に干渉するには転生が絶対のルール。身体は受肉してしまって、生前の通りになる」


「別にいい。俺はもともとタダの人間だ」


「受肉での死はそのまま死。異世界では貴方は英雄としては死なず、御霊はもう天へ戻れない。生まれ変わる輪廻はあっても、貴方は貴方でなくなる」


「もとより死すれば皆同じだ」


「私の助けは、せいぜい声でのサポートと最初に与えるギフトのみ。神の怒りの雷は期待できない。ここへ戻るにも、その食選器が必要になる」


「心細い世界で、貴方の美しい声を聴くことができれば百人力だ」


「――あぁ……デイブ! 


 思わず女神はデブに抱きつく。再び涙を流して、デブの巨乳へと顔を埋める。


 私は無茶を言っている。貴方に命をよこせと言っている! 格の違いを盾に貴方に死地へ赴けと言っている。何故そんなに優しいの? 別に駄目なら貴方とここで――」


 確かに、世界を救ってほしいと女神は言った。そして、手を取ったと言っても英雄は所詮人間。女神エーオースの見立てでは、悩む彼にそっと手を取り、力を授ける前にくんずほぐれつファイトいっぱつと行こうかなとか思っていたりした。


 だが、デブは。


 ああいいよ俺のおごりだ、メニューのここからここを一つずつだと言わんばかりに。死地への切符を二つ返事でOKしてしまった。流石の女神もこれには心が震えたようだ。


「貴方に救われた。あの阿呆共よりマシで、ここには俺の武が再び役に立つと踏んだからだ」


 女神エーオースが顔をあげると、そこには何百何千と繰り返し再生した、総合格闘技の試合で格上に立ち向かうデイビット鷹倉の顔。其の顔は太古の勇猛な戦士たちに引けを取らない、まさに英雄の顔だった。


「俺の武が、異世界に通じるか。楽しくなってきたぞ」


「貴方は……貴方は勇者よ。ああ、良かった。出会えて本当に」


「デイブ、だ。エーオース、案ずるな。溜め込んだカロリーは嘘をつかない。任せろ」



 漢デイビット鷹倉、意を決す。立ち向かうは異邦の地。左右も解らず、己が技が通じるかも定かでない魔境だ。だが彼は信じている。己に溜め込まれたカロリーを。彼にとりカロリーとは丹田に似る。


 そこに至るまでには、食物を作ってくれたお百姓さんや、それを芸術的な配合で紡ぎ料理と言う美を生み出す料理人。そして、それらを支える数々の命。だからこそ、カロリーとはデブにとり恵みそのものであるのだ。


 デブ道とは、カロリーに感謝をすることである。


 そして真のデブとは、好きなものをただ『カロリー』と言う。料理で言うのは下の下。お寿司はデザートでありカレーは飲み物であるからして、そもそも在って当然であるものを好きという意味は通らない。


 だからといって「丼もの」や「麺」、「粉もの」などのカテゴリで言うのは序の口。「肉」や「米」、「野菜」と基本的成分で称してようやく幕の内である。


 もう一度いう。


 真のデブとは!


 道を極めんとする者は!


 好きなものをただ一つ『カロリー』と言う!


 それが数多の命と技に贈る、崇拝に似た感謝の意である。



 異世界、何するものぞ。カロリーは全てを解決してくれる!


 そう信ずれば、デブは百戦危うからずなのだ。



(第一章 デブが翔んだ日 完)

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