最終話【78はヒーローに非ず】
「以上が真実だ」
癒し屋がジムに語り終える。
「・・・もしも真実ならばかなり重大事じゃないですか」
「だけど証拠は一切無い」
「・・・・・」
癒し屋が遠い目をする。
「貴方はこれで良いんですか?」
「あぁ、 これで良いよ・・・78は言ったよ『自分はヒーローではない』と」
「・・・・・」
「『自分は後から来る人達の為の犠牲になれば良い』と」
「悲しいですね」
「そうだね、 78も怪人の被害に遭った奴だからね
怪人に良い様にされるのが許せなかったんだろう」
「・・・・・」
ジムが俯く。
「確かに悲しい事だろう、 だが嘘も方便
彼の犠牲でこの国は何とかなった、 それで良しとするしか無いだろう」
「そうですかね・・・」
「さて、 私の話はこれで終わりだ」
「今日はありがとうございました」
「いや、 良いさ」
ジムが御辞儀をして去っていく。
「ふぅ・・・」
癒し屋が溜息を吐く。
「失礼します」
癒し屋の治療院の職員がやって来る。
「何?」
「夢宮さんが来ています、 下のテラスでお待ちしています」
「うん、 分かった」
嘘も方便、 真実はこうである。
人首相を殺した78を殺した、 と言うデマを流して78を救う。
幸いにも78の正体が夢宮だと分かっていないので問題はない。
増してや情報インフラが壊滅だった当時では真実を知る術は皆無だろう。
癒し屋は立ち上がってテラスに向かった。
このテラスは少し自慢で森林浴を存分に楽しめる。
コーヒーとカツカレーを食べながら夢宮が手を振る。
「これ位のご褒美は有っても良いよね」
「何の話?」
癒し屋の呟きに反応する夢宮。
「何でもない」
夢宮は78を止めた、 その代わりペンキを被ってカラーヒーローと言う名前で
各地で戦っている。
78はヒーローに非ず、 しかし夢宮 徹は人の為に戦い死ぬ、 ヒーローであると言える。
「いや、 何でも無いさ、 今日は奢るよ」
「すまないね、 最近金欠でね、 昔はお金持ちだったけど・・・」
「働いたら?」
「バイトでもしようかなぁ・・・」
「戸籍とか如何するの?」
「ちゃんとあるよ」
そんな事を言いながら和やかな時間を過ごした78だった。
彼の物語はここで終わりだが彼の人生と戦いは続く。
彼の行く末が幸福か、 それとも死か、 読者の方々にお任せする。
それではこれにておしまい!!
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