第390話【四天王】

神都畑間の市議会を改築した大聖堂

その中心に座する四天王、 野木久保 誠也、 そしてその周囲で瞑想に励む教徒達。


「さぁ子羊たち、 今日も教祖様から頂いた聖水を呑みましょう」


器に満たされた水を回し飲みする教徒達。


「おぉ・・・光が見える・・・」

「美しい・・・・・」


教徒達は涙を流し歓喜している。


「失礼します!! 誠也様!! いらっしゃいますか!?」


大聖堂のドアを開けて大柄な男が入って来た。


「瞑想中だぞ!!」

「し、 失礼しました!! ですが大変な事態になっておりまして・・・」

「・・・君達は瞑想を続けていたまえ」

「はい、 誠也様」


誠也は立ち上がり男の傍に寄る。


「外で話そう」

「分かりました」


大聖堂の外に出た誠也と男。

男はノギクボ教の僧兵、 つまり兵隊である。


「何が有った」

「怪人達が攻めて来ました!! しかも複数個所!!

恐らくクルセイダーと獅子堂一派です!!」

「そうか」

「そうか・・・って何か対策は無いのですか!?」

「無いね」

「そんな!! このままでは!!」

「このままでは、 何だ?」


ずいと詰め寄る誠也。


「この四天王が守る畑間が落ちるとでも?」

「い、 いえ・・・」

「何も案ずる事は無い、 この神都には四天王が居る

恐れる事は無い、 我々に全て身を委ねると良い」

「し、 しかし、 このままでは支配領域が」


怪人に変身する誠也。


「ひっ・・・」

『何も案ずる事は無い』


誠也は僧兵の顔を掴んだ、 僧兵は恍惚の表情になって倒れた。

誠也は人間に戻り、 背伸びをした。


「さて・・・どうするかな?」

「誠也君、 瞑想の時間は如何したの?」


四天王の一人、 鶴瓶 亜紗が現れた。


「鶴瓶さん、 いやね、 こいつが連れ出したんですよ

何でもクルセイダーやら何やらがこっちに攻め込んで来たとかで」

「そうなんだ・・・でもまぁ、 良いんじゃないの?」

「そうだな、 もう既に【ユートピア】は完成したし・・・

後は派手に散るだけ」

「そうそう、 教祖様と共にね」

「さてと、 じゃあこっちもパーティ、 じゃ無かった瞑想に戻ります」

「うん、 じゃあこっちも戻るわ」


大聖堂の中に戻る誠也。

大聖堂の中では教徒達が歓喜の絶叫をあげていた。


「やっぱり先人の知恵は凄いなぁ・・・

薬を使っただけでちゃんと宗教として機能しているなんて・・・」


誠也はそう静かに呟いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る