第379話【結局】

山の上の村から降りて来た夢宮。

山の下の街の喫茶店に飛び込む。


「いら・・・おい、 凄い顔してるぞ、 大丈夫か」

「山の上の村、 ヤバい!! 訳が分からない!!」

「お、 おい大丈夫か? 如何したんだ?」


夢宮は吐き出す様に喫茶店のマスターに山の上の村の様子を放した。

磔の死体、 役所の惨状、 荒れ果てた田んぼ、 集会所の死体の山、 見当たらない家

訳の分からないラクガキがされた公民館、 妙な黒いローブの謎の人。


「・・・・・」


絶句するマスター。


「僕だって訳が分からなかったさ、 でも実際に」

「ちょっと待て、 田んぼ? 何の事だ?」

「え?」

「山の上の村には田んぼ何か無かったぞ」

「・・・・・え?」


夢宮には意味が分からなかった。


「10ヶ月前くらいに遊びに行ったけど、 結構あか抜けたかんじだったぞ?

コンクリートで道路も舗装されてたし」


そんな道路を見た事が無かった。


「じゃあ僕が見たのは一体何なんだったんだ?」

「・・・・・」


マスターは黙った。


「もう一回山の上まで行くのは如何だ?」

「絶対に嫌だね」


夢宮は断言した。

結局、 夢宮はこの町からも直ぐ後にしたのだった。

山の上の村の噂話は夢宮の話から更に尾びれが付いた。


「山の上では狂気的な殺人儀式が行われていたらしい」

「山の上の村は異次元と繋がっていて可笑しな事になっているらしい」

「山の上の村では金持ち相手の殺人遊戯場になっていた」

「地獄絵図が広がっている」

「催眠の怪人が居て悪夢を見せる」


等々


様々な噂が飛び交い、 興味本位で山の上に昇る者も増えた。

しかし山の上の村に辿り着けなかったり、 山の上から帰って来れなかったり

帰って来ても心を病んでしまったり、 噂は更に尾ひれがつく事になった。

何時しか不帰の村と呼ばれる様になって誰も立ち入らなくなってしまった。

村の外には何も問題も起こさないので国防軍も立ち入ろうとはしなかった。

後年、 文明が再建した時に動画投稿者が興味本位で撮影に訪れた時には

山の中の村は無くなり堆い草の草原が広がっているだけであったと言う。

撮影時の奇妙なノイズは霊の声だったと言われるが編集で付けた事が後に明らかになった。


一体あの村は何だったのか真相は藪の中である。

あの村で何が起こったかは誰にも分からないのだ。

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