第372話【一夜明けて】

夜も遅いのでジムの部屋で一晩泊まる事になった夢宮。


「夜も遅いが何か食べるか?」

「良いんですか?」

「取材料代わりだよ、 何か無かったか?」

「漬物なら有るよ」

「保存食代わりにして普段は食べないがこんな日に食べてもいいだろう」

「悪いですよ、 そんな」

「いいから、 いいから」


そう言って出された白菜の漬物。


「じゃ、 じゃあ頂きます」


しゃく、 と漬物を口にする夢宮。


「・・・美味しいですね・・・」


ぽろり、 と涙を零す夢宮。


「お、 おい大丈夫か?」

「大丈夫です、 叔父が元気だった時に漬けていた漬物を思い出して・・・」

「叔父さんは今どうしている?」

「・・・あの日から気になって叔父の居る病院に行ったのですが・・・

混乱で病院はもぬけの殻、 何処かに転院したらしいのですがそれも分からず仕舞いで」

「そうか・・・」

「・・・・・」


しゃくしゃく、 と漬物を食べる夢宮。


「久々に食べました、 漬物」

「まぁこんな世の中だからな・・・」

「いや、 叔父が怪人に襲われてから大分経っていて

漬物を買う機会も有ったんですが、 店売りのはどうも合わなくて

この漬物美味しいですね」

「あぁ、 分かる分かる、 保存料とか酷いんだよなぁ」

「そうそう、 何だかんだ言って自家製が一番よ」


漬物を褒められたのが嬉しいのかマミも話に参加して来た。


「やっぱり自分で作るのが至高ね、 こういう時でも自分で保存食作れれば最高だし」

「確かに、 僕も旅していて保存食が作れなくて色々と困りましたよ

今は自己流で干し肉とか作っています」

「干し肉か・・・何の肉?」

「野生動物を狩ったりとかもしています」

「狩りが出来るのは凄いな、 血抜きとかってどうやるのか分からん」

「僕も自己流ですが、 血が乗った肉も乙なもんですよ

如何ですか、 今少し有りますが食べます?」


バッグから干し肉を出す夢宮。


「ふむ、 頂きます、 ん、 血の塩味が良いなぁ」


そんな事を言いながらわいわいやって夜は更けていった。

そして翌朝。


「ん・・・何時の間にか眠っちまった様だな・・・」


ジムはキッチンの机の上で眠っていた。

マミはベッドで寝ているのか姿が見えない。


「・・・・・」


机の上には書置きが残されていた。


「『つけものおいしかったです、 ありがとうございました78』

・・・意外と丸文字で書くんだな」

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