第272話【追跡】

バーサーカーは只管走る。


「くそっ!!」


完全に不覚だった、 適当に走り回っていたので既に帰り道も分からない。

詰みの状態と言っても良い。


「何かマーキングでもしておけば良かったか・・・

こんな事ならMazeに参加しなければ良かった!!」


怪人と戦うと言う事に対して軽く考え過ぎていた。

今まで自分が動画等で見て来た怪人とは格が違う。

刃が立たないと確信した。

バーサーカーは心底公開した、 が


「・・・・・今更言っても後の祭り、 ポジティブに行こう!!」


バーサーカーの処世術、 発想の切り替え。

別名現実逃避。

現状を好意的に解釈

または現状から逃避して良い方に考える。

現状を『大ピンチ』→『滅多に経験出来ない貴重な体験』と変換し

脳内からドーパミンその他脳内麻薬を大量に出して身体能力を底上げする。


「はあははははっははっははははっはぁ!!

燃えてきたああああああああああああああ!!」


奇声を発しながら全速力で進むバーサーカー。

今までこうやってどんなピンチもチャンスに変えて来たのだ。


この状況になったバーサーカーは強い。

今までにもFightingZoneでのコロシアムで死にそうになった事は多々ある。

死に近い場所なのだ仕方ない。

その度に彼はこうやってハイになり奇声を挙げながら困難を切り拓いて来たのだ。

今回もそうやって現状を切り拓こうとしている。


「ひゃああああああはあぁぁぁあはっはあああぁぁ!!」


眼をぎょろぎょろさせながら周囲を見渡す。

周囲の状況から何処に宝が有るのかをざっくばらんに推測する。


「こっちだ!!」


右に曲がる。

左に曲がる。

まっすぐ進む。

適当に進んでいるに等しい。

だがこういう時のバーサーカーの直感は外れないのだ。

死線ギリギリを歩む、 いや走る者の感性は研ぎ澄まされ

超豪運とも言うべき存在と昇華するのだ。


「おいおい、 もしかしてこれかぁ!?」


目を輝かせるバーサーカー。

その目に映るのは巨大な金庫。


「さぁて!! この金庫どうやって開ければ良いんだァ!?」

『・・・あ、 あぁ、 そこに端末が有るだろう?

その端末のキーボードにパスワードを打ち込めば良い』

「パスワードは一体なんだァ!?」

『パスワードは』


熱い、 バーサーカーはふいに腹部に熱を感じた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る