第222話【司法取引】

「まず胎太鼓さん

貴方はノギクボ製薬が怪人の開発をしていた事を知っていたのですか?」


栗貫が尋ねる。


「知っていた、 ただ私には事が起こってから知らされていたんだ

会議でそういう議題が上がって初めて知った、 と言う事だ」

「だとしたら、 敗訴は確実ですね」

「そんな!!」

「ですがやる事はやらさせて頂きます

無罪は不可能でも減刑は何とかしてみたいと思います」

「減刑・・・ですか・・・

それでも家族には迷惑をかけてしまいますね・・・」

「そうですね・・・何か司法取引の材料になるような事実は有りますか?」

「無いです・・・私は怪人の研究施設の場所すら知りませんでした

本社に有ったとは初耳でした」

「何も知らなかったのですか?」

「自慢じゃないですがコネとゴマすりで出世して来ましたからね

学生時代も先輩のコネで過去問を貰ったりしていました

抜け道を探しながら人生を乗り越えた私に能力何て物は無いです」

「逆に楽な道を探すって言うのは一つの能力だと思いますが・・・」

「親からの教えだったり先輩からの教えなので私の能力では無いです」


頭を抱える栗貫。


「何か交渉材料に出来る物は無いんですか?」

「無いですね」

「本当に?」

「えぇ、 私が知っている情報は既にC2号部隊も知っている情報でしょう

それに私も知っていても知っているだけで詳しくは知らないのです

嘘を吐く胆力も知力も情報収集能力も無いです」

「・・・・・貴方の様な無能な方には

会社の言う事を聞かざるを得なかったとして同情を集めると言う手を使うべきでしょうが

事が事なのでその手は使えませんね・・・

偽証もリスクが高過ぎますし弁護士として見過ごせません」

「如何しましょうか・・・」

「必死になって策を考えて下さい

さもなくば貴方は絞首台に送られる事になります」

「・・・・・それだけは出来ない・・・息子の結婚までは死ねない・・・」

「私の方でも策を考えて見ますが、 今回はこの辺にしましょう」

「そうですか・・・よろしくおねがいしますね」


栗貫は面会室から出て胎太鼓も看守に連れられて牢屋に戻った。


「・・・・・」


牢屋で一人頭を抱える胎太鼓。


「何でこんな事になったんだ・・・」


胎太鼓は頭を抱えながら今までの人生を振り返ってみた。

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