第217話【ヒーローに非ず】

「怪人の脅威から人々を守る為に怪人を造る・・・

その為にどれだけの人々を犠牲にして来た?

それ以前に本当にそんな高尚な目的で行動していたの?」


淡々と尋ね始める癒し屋。


「確かに我々が殺して来た人数は千や万では足りない

じゃが怪人はもっと多く殺しているじゃろう」

「言い訳になってないよお爺ちゃん」

「・・・確かにな、 じゃがな何の犠牲も無しに事を成せる訳は無いんじゃよ

儂はヒーローでは無い、 そして儂に金を出す奴等も善人では無い

怪人を造る為には代償が必要なんじゃよ」

「代償ね、 その代償で私の両親が死んだんだ

納得しろ、 なんて事は出来ないよ」


癒し屋が責める。


「そうじゃな・・・ならば如何する? 儂を殺すか?」

「そうね、 殺すわ」

「待て」


癒し屋を制する夢宮。


「何で止めるの?」

「まだ喋って貰う事が山の様にある・・・」

「例えば?」

「怪人の製造にどの程度ノギクボが携わっていたのかとか」

「会長直々に視察とかに来てたのぉ」

「・・・全部クロって事か・・・しかし・・・あの状況では・・・」

「会長は助からんじゃろうな、 助かっていたとしたら

真っ先に助かった事をアピールするじゃろうし」

「だとしたら会長を殺す手間が省けて良かったよ」


癒し屋は嘯いた。


「・・・癒し屋、 現実的に考えなよ

幾ら怪人でも一人でノギクボ全てを敵に回して勝てると思う?」

「さっき怪人をばったばったとなぎ倒していた男の言う事とは思えないな」

「言い方が悪かった、 ノギクボの連中全員捕まえて殺せるのか?

絶対あいつ等逃げるだろう」

「・・・何が言いたい?」


ちらりと魚目を見る夢宮。


「このお爺さんに全てを法廷で暴露して貰って関係者全員を逮捕して

法の裁きを受けさせる」

「生温い!! 法の裁きだって!? 結局生かすって事じゃない!!」

「そうはならないだろう、 これは怪人誘致に当たるんじゃないのか?」


怪人誘致とは怪人を誘き寄せて任意的に被害を出す事である。

ネットゲームで言えばMPK(モンスターによるプレイヤーキラー)

の様な物である。

怪人誘致罪が制定されたのは国内で起こった怪人を誘き寄せて被害を甚大にした

【蔵馬事件】が発端で制定された物である。


「怪人を造り出すのが怪人誘致になるとは知らんかったの・・・

まぁ良いじゃろう、 お主らに救われた命、 散らすのも悪くない」

「潔いな」

「あぁ・・・その前に飯に行かせてくれ」

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