第191話【実証】

「佐原さん、 如何すれば検証が充分になるのですか?」


佐々島が尋ねる。


「余原です、 実証に必要なのは体験だと思うのですよ」

「体験?」

「えぇ、 家を買うならばモデルルームを見る様に

車を買うならば試乗する様に、 食べ物を買うならば試食する様に

システムC2を体感してみなければ話にならないと思います」

「それは変だろ!!」

「いや、 分からなくもない」

「しかし一般人に兵器の操作をさせるのは」

「そうだ!! そもそも実戦配備されている戦闘機を市民に全て操作させているのか!?」

「だがシステムC2は体感してみたい」

「体感してみたいからと言ってやれる訳はない」

「戦闘機に憧れているからと言って乗れる訳では無い」


一気に皆が議論をぶつけ合い混乱していく。

森は敢えて泳がし混乱の画を取る。

余原もこんな論が通るとは思っていない、 その場を混乱させて

良い画を提供するだけなのだ、 しかし・・・


『良いでしょう』

「え?」


獅子堂のビデオ通話越しの言葉に会場がピタリと止まる。


『実はこんな事も有ろうかと

このスタジオの外に装甲車をスタンバイさせて有ります』

「え・・・聞いていない・・・台本にも書いて無いですよ?」


森も困惑する。


『システムC2を体験して貰おうと思い用意していました』


ざわ・・・ざわ・・・と会場がざわつく。


『私も聞いてませんね』


人首相が言葉を紡ぐ。


『システムC2が世間に認めて貰う為には手っ取り早いと思いまして

早急だったでしょうか?』

『いや獅子堂さん、 良いアイデアだと思いますね

是非とも体験して貰いましょう』

「ちょ、 ちょっと待って下さい

万が一暴走や持ち出しの危険があった場合・・・」


佐々島が慌てて立ち上がる。


『心配在りません

システムC2は外部から緊急停止させられるようにしてあるのをお忘れですか?』

「・・・そ、 そうでした」

「・・・・・えーっと・・・」


森がディレクターの指示を仰ぐ。

ディレクターからGOサインが入る。


「そ、 それでは外の装甲車に行ってみましょうか」

『その前に誰が体験するか決めておいた方が良いのでは無いでしょうか?

全員体験出来ません、 用意してあるのは10人分だけです』

「10人分・・・そ、 それでは誰がシステムC2を体験するか決めたいと思います」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る