第161話【強行突破】


「やばいだがねー・・・」


ダガネ物産(株)と言う会社の一室で頭を抱えるダガネ物産の社長

名古屋 鏨は悩んでいた、 自らの肝いりで造り出した新製品。

『非常食液体たい焼き』が思った以上に売れなかった。

ネット上で話題になるかなと思って作ったこの商品

ネット上でもまるで話題にならず一切売れなかったのだ。

そして起死回生の策として北での被災地に寄付をして

売名する予定だったのが・・・


「くっそー・・・」


事の起こりは数分前、 北に大量の在庫と共に向かわせた営業部長からの電話だった。


「営業部長、 どうしただがね?」

『社長、 今まで御世話になりました』

「如何言う意味だがね?」

『私の机の中に辞表が入っています』

「・・・はい?」

『今日限りでダガネ物産(株)を退社致します』

「ちょ、 ちょっと待つだがね!! 如何言う事だが説明するだがね!!」

『私の故郷までの所に検問が張って有ります』

「ふむ、 それで?」

『これから家族の安否を確認する為に自衛隊の検問を強行突破します』

「きょ、 強行突破!?」

『社長や会社に迷惑をかけない為にもここは私は職を辞する事にします』

「・・・わ、 分かっただがね」

『つきましては退職金としてこのトラックを頂きます』

「・・・トラック?あ・・・」


名古屋は思い出した。

『非常食液体たい焼き』を搭載したのは自分の会社のトラック

つまり・・・


「待て待て!! 強行突破ってウチのトラックでやるつもりか!?」

『申し訳ないと思いますがこれしかないので・・・』

「待て待て!! 冷静になるだがね!!」

『失礼します』

「まっ」


てと言う前に電話が切れた。


そして現在に至る、 自分の前には営業部長の辞表届け。


「くっそ・・・」


切り捨ててしまえば良いと言う話ではない。

営業部長を切り捨ててしまえば後が続かない、 彼無しでは営業成績が大分落ちる。


「どうすれば良いんだがね・・・」


そもそも営業部長が怪人のスタンピートの

危険地帯に行って帰って来れる確証が無い。

そして帰って来たとしてもお咎めがあるだろう。

そうなれば会社としても大ダメージだ。


「・・・・・・・」


辞表を受けるべきか否か・・・

受けてしまえばお咎めがこちらに波及する事は無い・・・筈?


「本当に如何すればいいんだがね!!」

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