第132話【アポイントメント】

興亜が六頭に電話をかけると葵は電話をひったくった。


『もしもし』

「もしもし、 貴方は誰ですか?」

『!?・・・葵・・・か?』

「質問に答えて貰っても良いですかね?」

『・・・・・ノギクボの追手です』

「それはそれは、 面倒が無くて助かります

私個人としてはこのまま逃がしてくれると助かるのですが

そうは言っていられないのでしょう?

一度会って話し合いをしたいのですが、 お時間は大丈夫ですか?」

『・・・・・明日の21時に

この街にある我が社の支社に来て貰うのは如何でしょうか?

(訳:袋叩きにしてやるから少し時間を下さい、 そして何か有っても良い様に

ウチの敷地内に来て下さい)』

「今日の方が都合が良いんですけどねぇ

私が勝手に住んでいる場所で如何でしょうか?

(訳:ふざけんな馬鹿、 今日中に私の所に来い)」

『・・・・・』

「明日にはここを出たいと思っているので

出来る事なら今日中にお会いできると助かるのですが如何でしょうか?

(訳:飲めないのならばとっとと逃げるぞ)」

『・・・分かりました、 では今日中に向かいます

貴女は何処に居るのでしょうか?』

「私は街外れの廃工場で待っていますので来て下さい、 では」


ピッ、 と電話を切った。

そして興亜に手渡した。


「じゃあ行って来るよ」

「葵・・・行っちまうのか?」

「うん、 怪人になった私はもう普通の生活は出来ないから・・・

ノギクボからの手下もやって来るだろうし、 私一人じゃあ

ノギクボの連中皆殺しにも出来ないだろうからさ」

「・・・・・葵・・・」

「・・・ごめんね」


葵は俯いて教室の外に歩いた。


「待ってくれ!!」

「駄目だよ、 もう私は怪人で人殺しの親殺しだ

もう二度と日の当たる場所に出ていけない、 きっと私は地獄に堕ちるだろう

でも仕方ないじゃない、 怪人って言うのはきっとそう言う物だから」

「そんな事は無い!! お前は俺の恋人だ!!」

「ありがとう・・・でも・・・」


もう違う、 と言いたかったが言い出せず、 俯いたまま教室から出る葵。

葵は自らの頬を撫でた、 涙が出ている、 と思ったが

手は乾いていた。


「怪人は泣かない・・・のかな、 じゃあ行こうか」


葵は自分が住処にしている廃工場へ向かった。

興亜を置き去りにして彼女は向かったのだった。

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