第78話【指導】

『さて鶴瓶君、私の息子に薫陶を願いたいのだが良いかね?』


スピーカーから翔の声が響く。


「分かりました、では誠也君、怪人から人間への戻り方を教授しよう」

「よろしく頼むよ、これじゃあ街中に出る事も出来ない」

「まぁ私達が外に出られるかは分からないけどね

まずは『人間に戻る』と強く念じて見て」

「念じる?」

「そう、思いの強さが怪人の強さなのよ、私が怪人になれたのも

きっと私の中の怪人になりたいと言う思いが強いからだろうね」

「・・・・・」


鶴瓶の声を無視して大麻の腕を見ながら『人間に戻る』と念じて見た。

暫く念じてみたが駄目だった。


「おい、駄目じゃねぇか」

「駄目なのは貴方の心の持ちようよ、しょうがない、補助輪を付けてあげよう」

「補助輪?」


鶴瓶は誠也の首筋に注射を打った。


「なっ・・・・・ヤクか」

「おっと、君はヘビーユーザーだったかな?

じゃあ薬を使うと集中力が増すのは知ってるわね?

さぁこの状態で集中して人間に戻って見なさい」

「むむ・・・」


集中する誠也、するとするっと大麻の腕が人間の腕に戻った。


「おぉ!!やった!!」

「じゃあ次は全身の怪人化にチャレンジしてみようか」

「・・・え?」

「え?って何?」

「いや、何でそんな事しないといけないんだ?」

「怪人になったんだから怪人になってみないと」

『そうだぞ誠也、実験なんだからちゃんと怪人として振舞え』


父親からも言われる誠也。


「・・・嫌だと言ったら?」

「ノギクボ製薬の怪人の体には爆弾が仕込まれているのよ

反逆的態度を示せば爆散と言う訳ね」

「・・・・・アンタの体の中にも爆弾が入っているのか?」

「そうね、でも怪人になれるんならそれも良しじゃないの?」

「・・・・・」


完全にイカレてやがると再確認する誠也。


「・・・はぁ!!」


体中が大麻の怪人になる誠也。

そして朝顔の怪人になる鶴瓶。


『ここからは気が付かない振りをして聞いてくれる?』

『・・・何だ?』


怪人になった鶴瓶から妙な事を言われる誠也。


『如何やら怪人になったら怪人の言葉は怪人にしか分からない様なの

つまり怪人になっている私達の会話は貴方のお父さんを始めとした研究員には伝わっていない

と言う事なのよ』

『そうか・・・それで?』

『いや、脱走の打ち合わせでも如何かな、と』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る