第55話【身勝手な理由】

『まず昨日はな・・・俺の事を悪く行っていた連中だけを殺すつもりだったんだ』


語り始める禍蜻蛉。


『それで席を離れて怪人になって戻って来て何人か殺して回ったんだ

途中血を吸ったのが悪かったんだな

お前さんが言った通り血中のアルコールが急激に俺に取り込まれたんだ』

『それで?』

『気が付いたらベッドの上で倒れていた』

『は?』


怪人が間抜けな声を出す。


『つまりだな、酔って覚えていないんだ、理由としては酔った勢いで殺した

と言う事になるのか』

『・・・・・このゲス野郎』

『俺だって悪いとは思っているんだ、酔った勢いなんて殺人の動機としては最悪だ

小説家としてやっちゃいけないと思っている』

『批判を受け止めず相手に手を出す様な奴は

小説家云々よりも人として終わっている』

『人として?おいおい俺達は怪人だ、いわば人間を超えた超人類だ

そんな俺達が人間共の戯言に耳を貸す必要が有るか?』

『糞野郎・・・』


剣を構える怪人。


『おっと、そうだ、お前の名前は何だ?』

『78だ』


夢宮は走り始めた、横薙ぎに剣を掃う。

しかし禍蜻蛉はジャンプして躱した。


『虫のパワーを舐めるな、人間サイズの虫がどれほどのパワーを持つか知らんのか?』


虫の力は驚異的だ。

自分の数倍の重さの物を持つ種類はザラに要るし

驚異的なスタミナを持つ者も多い。

虫の多様性は非常に多く、この地球上で最も種類が多いのは虫であろう。

そんな虫の怪人が現れたら如何か、並の怪人では歯が立たないだろう。

並の怪人なら。


『こっちだって三葉虫だ』

『虫か?それって』


いずれにせよ、禍蜻蛉の方が早く

禍蜻蛉の左腕のから繰り出される針の攻撃は夢宮の外骨格を砕いた。


『ふん、吸血しようと思ったのに、殻が砕けただけか』

『・・・・・』


夢宮は外骨格を再生して盾を造り出した。


『そんな事も出来るのか、器用な奴だ』

『お前は人の批判を受け止められない、不器用な奴だ』

『読者は勝手な事を言う、自分の思い通りの展開にならない事に腹を立てているだけだ

文句が有るなら自分で二次創作でも良いから書いて見ろって言うんだ』

『嫌なら見るなって奴か、小説家が言って良い台詞じゃないな!!』


剣を振る夢宮、禍蜻蛉にしかし躱される。


『また普通の読者なら百歩譲って良いかもしれないが

俺のファンなら俺を全肯定するのが普通だろ!!』

『身勝手にも程が有る!!』

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