第6話 客観的視点を持ちながら何故借金を抱えたのか

いやはや流石に三時間日野市サイクリングは今の私には過酷過ぎた。

翌日は全身筋肉痛で、背中がつったと思えばふくらはぎがつるというような地獄の様だった。

起き上がることもできないほどには疲れて果てていた。

だが何故あんなことが出来たのだろう?

考えられる可能性は【過集中】だ。

土方歳三の事だけ、薄桜鬼の事だけに夢中になっていた。

他を顧みることなく。

だから、出来てしまった。

言わば、火事場の馬鹿力。

無事にポストカードを手に入れた今、私はとても気持ちが凪いでいる。



さて、本題に入ろう。

私という人間は集中し過ぎるきらいがあるが、そうでない時はとことん客観的だ。

数字の計算だって得意だし、論理的に物事をとらえようとする。

機械のたたき出した数字だけを鵜呑みにするような真似はせず、必ず自分で計算して結果を想定する。

例えば車のバックモニター、私はああいうものは信用していない。

私は車体感覚と自らの視覚情報で縦列駐車するし、センサーといった類は割と早めに壊れるのだからいつぶっ壊れるか分からないから信じるな、と思っている。

勿論サポート機能として使うのを否定してはいない。

だが、信じすぎれば機械は裏切る。

そして壊れているかどうか判断できるのも、また人なのだ。

そんな私が何故百五十万の借金を抱えたのか。

まず、躁状態にあったのは一つの原因だ。

だが、それだけではないはずだ。

そこで今客観的に考えたところ、私はカードの使用状況を可視化していなかった、という事に気が付いた。

当時私は四枚のクレジットカードを持っていた。

それぞれの支払日は異なり、引き落とし額も違う。

だが、それらをデータとして整理していなかった。

月にどれだけの支出があるのか、まとめていなかったのだ。

何故か、と言われれば「払えてしまっていたから」に他ならない。

それが、休職することになって問題が発生した。

傷病手当金の振込までは二カ月程度かかる。

その間、私の収入はゼロ。

僅かな預金では、カードの支払いに足りなくなった。

そこで私は安易にクレジットカードのリボ払いとキャッシングに手を染めたのだ。

馬鹿だろう。

今なら言える。

馬鹿である。

支払額を少しでも減らしたくてリボ払いに変更し、それでも足りない分をキャッシングしたのだ。

そしてそれを繰り返すはめになった。

何せ傷病手当金は基本給の三分の二しか出ない。

そこから家賃や健保や厚生年金が引かれ、手元に入る額などわずかだ。

リボ払いにしてしまった分の支払いのための余剰金が無い。

つまりカードの支払いのためにカードで借金をする、というスパイラルに陥ったのだ。

あとは想像に難くないだろう。

そして私はその総額に気づいたのは、鬱期を抜け出した時だった。

双極性障害であり、ADHDであると診断され、薬が変わって三カ月たったころだった。



たとえ根源に脳の暴走があったとはいえ、自分がしでかしたことだ。

その恐ろしさに私は震えた。

何とかして事故死して生命保険で借金をチャラに出来ないかと考えたりもした。

事実、私の入っている生命保険の死亡時の額面なら余裕で返済に充てられるからだ。

葬式費用を出しても余る。

ならばなんとか事故死を。

悶々と考えたが、うまい事故死の方法なんてものは無い。

つまるところ、生きて返済していくしかないのだ。

自己破産や債務整理は論外だ。

アレをすると五年から七年はブラックリストに入る。

その事実を、もし恋人や配偶者に知られたら?

婚期なんてものは無くなるだろう。

だから、返していくしかないのだ!



私は復職をあきらめてはいない。

休職期間満了までに復職できるか分からなくとも、私は障害者として年金暮らしをしたいわけではない。

私は働いた銭で飯を食いたいし、借金も少しでも早く繰り上げ返済したい。

今私は傷病手当金も出ていない状態だ。

だがそれでも、私は諦めていないし、必ず復職してやるんだと思っている。

いつか絶対スパーンと借金返してやる、それが今の私の心の支えなのだ。

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