第162話意地②

学校から帰ると着替え終わって、ベットに寝転んで壁を見つめていた。

「晴くん溜め息ついてるけどどうしたの?」

「何でもない、もうバイト行くね」

「…19時からって知ってるよ…一人にしないで」

「なら、18時頃まで居るね」

「ありがとう…こっち向いて」


ベッドに乗って、背中に触れると教えた。

「…気持ちが数十分前からアイスクリームだよ」

「ハグ我慢してるんでしょ‥冷めてないでしょ‥こっち向いてよ 」

「さすがに、嫌」

「…麻莉菜の前でキスするから‥もう少し待って‥」

「ま、まぁ、早めに頼んだよ」

「笑ったてるぅ…こっち向いて」

「無理」


晴斗が動かないと分かったのか、凜から背中に大好きと指でなぞられていた。

「…妹は寂しいよぉ、家族を寂しい気持ちにするんだぁ」

「‥分かったよ」


腕枕をして抱き締めると「えへへ」と奇妙な笑い声を聞かされていた。少し視線を下を向けて目が合うまで待っていたが、凜は目を閉じてゴソゴソ動いていた。

「…私は寝てるよぉ、キスしても分かんないよぉ」


おでこにキスして、目が合うとムッとしていた。

「お口にしてよ、おでこはダメ」

「マジで麻莉菜の前でキスしてくるまでしないからな」

「…やだよ‥寂しいよぉ」

「甘声出されてもしないよ、決めたからな」

「…意地っ張りなお兄ちゃんだね、いつまで我慢できるの」

「知らないよ、冷める前に覚悟決めてね」

「…うん」


晴斗が目を閉じると笑い声が聞こえてきた、頭が動き出すと目を開けたが、キスされそうになっていた。

「キスしたら怒るからな」

「…えへへ‥怒られたい‥」

「うわぁー‥ドン引きなんだけど、冷めるわぁ」

「…傷つくから‥言わないで‥」

「ごめん」


直ぐに、回された腕に力が入ると口にキスされ「怒らないで、学校で抱き締めてくれないと寂しかったの、私の晴くんなのに知らない子に呼ばれて嫌だったの」と寂しそうに言われた。

「俺も寂しかったよ、キスしたいけど覚悟が決まるまでしないって決めたんだ‥困らせないで」

「…うん」

「次したら泣いてても怒るからな」

「…我慢出来ないよ」

「俺は鬼になるからな」

「…はい」


晴斗が安心して昼寝をしたと思っているのか、息を顔に吹かれ、小声で名前を呼ばれ、顔を触られたが反応しなかった、急に「起きないとキスするからねぇ、怒らないでよ」と聞こえ、キスされると晴斗は舌打ちした。

「…怒ったからな」

「ごめんなさい」

「許さぬ、両手上げなさい」

「…嫌だ、殴るんでしよ」

「殴らないよ、お仕置きするから…手早く上げろって」

「…痛くしないで」

「少し苦しいだけ」

「嫌だ」


晴斗が体を起こすと、凜はベッドから降りて部屋から逃げようとした、直ぐに捕まえてベッドに寝かせて体重を掛けずに股がると、首元を隠されていた。

「何で首隠すの?」

「…締めるんでしょ」

「キスするだけ」

「本当?信じるよ」

「キスが欲しいんだよね」

「うん」


顔と腕をホールドして、濃厚なキスをしていた、凜の頬が赤くなり「んっ」と何度も聞こえ、息が上がっても止めなかった。苦しかったのか顔を逸らされ深い深呼吸をしていた。


数分間待っていた、トロンとした凜と目が合うと顔を近付けた、抱き締めたいのか、腕が動くとホールドを解いて、ギュッと抱き締められ、お互いに顔を赤くして濃厚なキスをまたしていたが、耳元で囁いた。

「もう無理、わがまま聞いてほしい」

「…先に言うね‥晴くんなら好きにして良いよ」

「……」

「……痛くしないでね」


数十分後、ボーッとしている凜の横に寝ていた。

「…麻莉菜の前でキスしてくれるまでしたくなかった‥家だけでも落ち着く場所にしたいから‥こんなことしといてごめん」

「……良いよ、私が悪いから…今だけ抱き締めて」


晴斗はそっと抱き締めていた。

「…鍵かかってるかな?」


確かめに向かうと開いていた、閉めるとベッドに戻った。

「ポンコツ開いてたぞ、また見られるわ」

「ごめんね」

「疲れたな、シャワー浴びてくる」

「…頭洗ってあげるから、もう少し抱き締めて」

「良いよ…今日バイト行きたくないな」

「晴くんの雑誌見たい…次の販売日にご褒美が待ってるかもよ」

「あぁ‥頑張れるわぁ」


抱き締めているとクスクス笑われた。

「…私のわがままも聞いて…キスして欲しい」

「良いけど、今日だけだからな」

「…だめって言いたい」

「言ってるけどな」


数十分後には二人でシャワーを早めに浴びていた、髪を洗われ洗い返し、背中も洗われて、自分で体を擦って外に出た、リビングで待っていると、髪も乾かして凜が入ってきた。

「ご飯食べて行くの、暖め直すよ」

「食べさせてくれるオプションはありますかぁ」

「…晴くんだけは特別なんだから‥キスもセットだよ」


恥ずかしそうに言われると、凜はキッチンに向かった、チンと電子レンジの音が数回聞こえると、晴斗は嬉しそうに椅子に座った。

「晴くん、向こうのテーブルで食べて」


テレビの前のテーブルに早めの晩御飯を置かれた、ビーズクッションに座ると膝に座られた。

「膝に座る必要ある?」

「あるよぉ、私が食べされにくいでしょ」

「えっ?」

「いいから」


食べさせて貰っていた、見つめていると聞いていた。

「…俺の気持ち‥重いって思ってない?」

「全然思わない…私は晴くんに悩ませてばっかりで‥恥ずかしがる自分が許せない‥けど慣れないの‥ごめんなさい」

「まずは、麻莉菜の前でキス出来るようになろうな」

「うん」

「気持ちが冷めるまでに頑張ってね」

「いつか言われると思ってた、がんばりまふぅ」

「何故口を尖らせる?」

「キスもセットの内です」

「要らん…おい、何でご飯にキスしてんだよ‥きたねぇなぁ」

「大切な人が火傷しないように温度確かめてるだけ…汚くない」

「…あぁ、ごめん」


何度も「美味しい?味は違う?」と聞かれて「美味しいから二回目は要らん」と教えた。

「お口開けてね」

「だから、マジでキスしたご飯食わすな」

「美味しかったでしょ、こんな食べさせ方‥初めてした」

「初めて?…許す」


初めてと聞いた晴斗は許したが、凜がキスしたおかずも口に運ばれて腕を見せた。

「鳥肌がヤバイ」

「……ごめんなさい」


肩を落として、落ち込んで目を閉じた凜の姿を見た。

「ツンツン」


声に出して胸を突っつくと、凜は急に「キャッ」と声を上げた、頬を膨らませて睨まれていた。

「ごめんなぁ、ピンポイントだったか?」

「変態が触らないで」

「なら触らない‥触れない…ごめんね」

「…晴くんならいいの、ごめんな」

「変な真似すんな」

「良いから口開けてね」


ご飯を食べ指してもらい終わると、着替えてバイトに行こうとした、玄関まで来ると駆け寄ってきた。

「晴くん、いってらっしゃい」

「いってくるね」


晴斗がドアノブに手を掛けると、引っ張られて振り向いた。

「…お互い‥少しの時間離れるけど‥頑張ってのキスまだだよ」

「苦しくなるだけしたよね?我慢して」

「…やだ‥今日だけお願い」

「本当に今日だけだからな」

「…うん」


キスしたが短いと怒られ、1分程していた、顔を離すと「えへへ」と言いながら、服を捕まれていた。

「…頑張ってね、帰り待ってるよ…お嫁さんになったみたい」

「あぁ、もう可愛いなぁ」

「…んっ」


クネクネしていた凜の顔を上げて、強引にキスしていたが「コラァー」と言われ、麻莉菜に晴斗は蹴られて盛大にこけた。

「…痛ぁ‥こっそり入ってくんなよ、ノックしろよ」

「何処の誰が玄関のドアノックするの?バカじゃないの?」

「確かにな、てか蹴るなよ…凜は怪我してない?」

「…大丈夫」

「本当に気持ち悪いよ、早くバイトに行って‥顔も見たくない」


麻莉菜に睨まれ、晴斗は舌打ちをした、扉を強く閉めてバイトに向かった。


バイト先に一人で向かうと、着替えて撮影が始まった、何度も取り直しされていた。

「表情が固いよ、笑って」

「何度も‥ごめんなさい」


晴斗は頭を下げてカメラマンに謝った、直ぐに気持ちを切り替えて撮影が再開された。数着撮り終えて挨拶をして部屋に戻った。


スマホを見ると、凜から着信とメッセージで「帰るとき、電話してね」とハートも添えられていた。


凜に直ぐ電話していた。

「今から帰るよ」

「気を付けてね」


短い通話だった、急いでバイクに股がって帰った、時間を見ていたのか、凜が立っていた。

「お帰りなさい」

「ただいま、てか夜なのに待ってたんだな」

「…怖かったけど‥早く会いたかったぁ」

「でもキスしないからな」

「晴くんが、今日だけ良いよって言ったよ」

「まあな、外だけどするよ」

「…良いよ、待ってたんだもん」

「ちょっと待ってね」


バイクを駐輪場に止めたいが、自転車が邪魔だった、凜のバイクの横に止めていた自転車を避けて、停めるとヘルメットを脱いだ。

「…お仕事帰りもカッコいい、髪もセットして乱れてるけどカッコいい…えへへ」

「クネクネすんな」

「何日も会ってなかったみたいで‥顔見ると恥ずかしい」

「ねぇ、早くバイト頑張ったご褒美頂戴」

「お外で‥モデルさんとキス…キャ」


凜は一人で舞い上がっていた。

「一人芝居してんの?22時なんだよ、先に家に帰るぞ」

「待って、手繋いで」

「早くキスして、本当に日付が変わるとしないからね」

「…もう、二時間切ってるよぉ」


落ち込まれると顔を除き混み、笑みを送った「凜の頑張る姿で、ご褒美あげるよ」と教えてキスしていた。

「続きはお風呂に入ってからね」

「…また入るの?頭だけ洗ってあげるよ」

「麻莉菜にバレたら、俺が殴られるんだよ」

「…痛くないでしょ、怖くもないでしょ」

「まあな」


手を繋いで家に入ると、麻莉菜はリビングでテレビを見ていた。

「晴くん、静かにお風呂いくよ」


人差し指を口に当てる凜を見て付いていった、お互い服を脱いで頭だけ洗ってもらい、寝室で寝転んでいた。

「…まだ寝かせないよ」

「えっ」

「明日からキスしてくれないんでしょ、明日も明後日の分もしなきゃ」

「…もう疲れてんだよ‥寝たい」

「今日最後のお願い」


日付が変わるまでの一時間、寝ることも出来ずにされるまま、何度も嫌になるほどされていた。

「晴くんからもして」

「その積極的な姿を外で見せて」

「…良いから早く」

「急かすな」


晴斗は眠たいが時間を見ることもなくしていた。

「…時間過ぎてるけど、もう少し」

「なんか‥イタズラしたい」

「今日は我慢して」

「目が冴えて‥無理っぽい」

「…なら良いよ、麻莉菜が居るの忘れないでね」

「冗談だよ、その気になるな」

「ばか、ばか」

「…ごめんね」

「…もう笑って言うなんて最低」

「ごめんね、何したら許してるれる?」

「…キスと撫で撫で‥ちて」

「ちて?朝だけなら良いよ‥おやすみ」

「おやすみなさい」


電気を消すと、外の明かりに照らされている凜の頬を撫でて、頭を撫でてあげると気持ち良さそうに寝息をたてていた、晴斗も寝顔を見ていると寝ていた。












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