第131話退屈…居場所

三人は傘を差して学校に来ていた、下駄箱で麻莉菜と別れ、凜と二人で飲み物を買って教室に向かっていた。

「席替えして、凜の後ろに行きたい。」

「私も近くがいいけど、晴くん友達作ってね。」

「マジで要らないんですけど。」

「作りなさい。」

「分かったよ。」


教室に来ると凜と別れ、自分の机で突っ伏していたが、晴斗は凜に挨拶する男女の声を聞いていた、良太と恵と林道に晴斗は挨拶されると、返していた。

…何もすることがない。


数時間後…

 チャイムが鳴り、四時間目の授業は体育だった、女子が更衣室に向かうと、晴斗は教室のロッカーから、今日持ってきた体操服を取り出し、自分の席で着替えていると、誰かに体を触られ、鳥肌が立って気持ち悪くなり振り向いていた。

「触んなって林道か、どうした。」


晴斗は体操服に着替えながら話していた。

「鍛えてんだな、良太に聞いた通り脱ぐとバキバキだ。」

「お、俺の体で妄想してんのか。」

「違うわ、同じクラスになって初めて見たよ。」

…あぁ、一年の時は後ろの角でこっそり良太と着替えてたな、てかバキバキってなんだよ。

「見せもんじゃない、急に触るな。」


晴斗は体操服に着替えて話が終わると、雨のため一人で体育館に向かった、体育館に着くとチャイムが鳴り、鎧塚先生が来た。


前の授業はバドミントンをしていたのか、ネットが張られてラケットと羽が置いていた。


ストレッチをして体育館を5周走ると、バドミントンか卓球で皆が別れて行った。バドミントンがしたい人は座って順番待ちをしていた姿を見て、晴斗も座って休んでいた。


二階から、良太に卓球に誘われたが断って腕を組み、目を閉じて俯いていると「晴くん」と呼ばれて目を開けると、目の前に凜がしゃがんでいた。

「どうした。」

「晴くんバドミントンしないの。」

「しないよ。」

「横に座っていい。」

「まぁ座っていいけど、友達と一緒じゃなくて良いのか。」

「ずっと晴くんが暇そうだから。」


凜は「よいしょ」と可愛く言って隣に座ると、晴斗は「足伸ばして」と言って、足を伸ばさせると、晴斗は横になって膝枕を気にせず楽しんでいた。

「教室で凜の回りに友達が集まるから、声も掛けれなくてずっと寂しい。」

「私が居るよ…ねぇ、二階から見られてるよ。」

「凜が慣れないなら、クラスメートが見慣れるよ。」


羨望の眼差しで見られ、殺意のこもった視線は晴斗に突き刺さっていた。急に晴斗はクラスメートの男子に声を掛けられた。

「お前何してる、月城さんが嫌がってるぞ。」

…お前ってなんだよ、めんどくさいな。


凜の兄になると学校で絡まれ過ぎて、晴斗は言い返すのがめんどくさくなっていた。

「凜がお前に嫌だから助けてって言ったか、耳鼻科行った方がいいよ。」

「義兄妹だからって何しても言い訳じゃない。」

「他人が口出すことじゃない、てか凜が嫌って言ったかな。」


晴斗は凜に視線を移すと教えていた。

「前こいつに絡まれたんだよ、凜に近づくなって言われた…俺が凜に嫌なことしたことあるか。」

「…されたことないよ。」

「聞いたか、嫌じゃないって。」

「月城さんは優しいから断れないだけだ。」

「お前凜のこと知ってる口振りだけど、俺は一緒に暮らしてるから凜のタイプも好きな人もお前より知ってる…なぁ凜の好きな人この学校に居るよね。」

「…そうだけど‥変なこと言わないでよ。」


言い合いの末、晴斗が凜の好きな人は学校に居ると伝えると、目の前のクラスメートはニヤけて立ち去った。


鎧塚先生に晴斗は座るように注意されると、座って凜に小声で聞いていた。

「凜の好きな人は、この学校で同じクラスだよね。」

「うん…今小声で話してる人だよ、晴くんのことだよ。」

「てか凜が隠すから絡まれるんだよ。」

「…本当に悪いと思ってるんだよ。」

「でも、コソコソするのも楽しいぞ、麻莉菜にも仲良し兄妹って言われたんだ、ずっと内緒にしとこうな。」

「うん。」


凜はクスクスと笑うと、晴斗は「凜も学校で皆に声掛けられて疲れるだろ」と小声で聞いていた。

「慣れちゃったよ、晴くんも絡まれて大変だね。」

「絡まれ慣れたよ、怖いけどなぁ。」


凜にまたクスクス笑われるとチャイムが鳴り、教室に戻って凜から弁当を貰って教室から出ていこうとしていたが「雨だよ、何処に行くの」呼び止められていた。

「麻莉菜の教室で食べるんだよ。」

「上級生が行ったら嫌がるよ。」

「ダメそうだったら戻って来るよ。」


晴斗は麻莉菜のクラスに来て教室を覗くと姿がなかった、他のクラスで麻莉菜は友達と食べていたが、晴斗は教室に入ると、凜を見てた男子生徒が居ることに気付いたが、麻莉菜の頬を突っついて声を掛けていた。

「麻莉菜一緒に食べよ。」

「何で来たの。」

「二年生になって自分のクラスに居場所が無いんだよ、凜の兄になって先輩も同級生の男子から毎日絡まれるんだよ。」

「そんなこと知らない、凜姉ちゃんと食べたら良いでしょ。」

「凜は友達と食べてる、今日は雨で麻莉菜と食べたいんだよ。」

「晴くん来なさい。」


呼ばれて廊下を見ると、凜は弁当箱を持ったまま腕を組んで立っていた。

「何かようか。」

「良いから来なさい。」

「まだ麻莉菜と食べてない。」


凜は教室に入ってくると、晴斗の手首掴んで教室の外に連れ出そうとした。

「麻莉菜は美術部でも良いから部活入ってよ。」

「凜姉ちゃんがしっかり見てよ、晴兄何するか分かんないんだから。」

「俺を問題児扱いするな。」

「晴くん来なさい。」

「はいはい。」


教室の外に連れ出されると、晴斗は手を振りほどき、直ぐに手を繋ぎ直すと、凜に引っ張られていた。

「周りから見ると、凜から握ったと思われるよ。」

「…良いから来て。」


凜に手を握られたまま生徒とすれ違い、屋上の階段まで来ていた。

「外は雨だぞ。」

「知ってるよ、晴くんと食べたいの。」


屋上の階段まで来ると、凜は階段に座って晴斗は立っていた。

「晴くん座って。」

「ちょっと待ってね。」


晴斗は屋上の扉の近くに数個の机と椅子があったのを思い出して、綺麗にすると一つの机を二人で囲んでいた。

「あんまり、地べたに座った姿見たくない。」

「ごめんね。」


二人で弁当箱を開けると昨日の残り物なのか、小さいハンバーグが入っていた。

「…晴くん食べさせてよ‥家で出来ないから、お願い。」

「別にいいよ、凜の弁当箱貸してね。」


弁当箱をトレードすると、小声であーんと言って食べさせあっていた。

「…次は卵がいい。」

「俺も卵にして。」


玉子を食べると砂糖が入って甘いと分かって、凜に「晴くん、だし巻きが好きだよね」と言われると「凜とは違う味で、甘いけど美味しいよ」と教えていた。


食べ終わると、凜は「膝に座っていい」と聞かれると、晴斗は膝を叩いていた。


膝に座られると、首に手を回されていた。

「黙ってたけど、首に手を回させると‥ドキドキするんだ。」

「そうだと思ってたよ、晴くん少し顔が赤くなるもん。」


恥ずかしくなり、真剣な表情で凜に言った。

「…凜に相談していい。」

「悩み事…聞くよ。」

「今のクラスって知らない人が多いんだ、俺の居場所がない、麻莉菜にも来るなって言われてどうしたらいいんだろ。」

「晴くんからクラスメートに声掛けたら良いんだよ。」

「言っとくけど…俺は友達と一緒じゃないと人に話し掛けないよ、良太が居たから他のクラスでチョコ貰いに行ったりしたんだ、屋上の知り合いも向こうから優しく声かけられたんだ…俺は強がりで‥心は弱いんだ。」


ギュッと抱き締められ、抱き締め返すと言われた。

「ずっと傍に居たから心が弱いの知ってるよ、外で強がってたのも、家で二人きりになると寂しがるのも知ってるよ…私が居るから安心してね。」

「まだ友達いらない、少しずつ頑張るよ。」

「晴くんのペースでいいよ。」

「凜が居ないと絡まれて学校に居場所が無い、友達と歩くと迷惑掛けるから一人で行動してる、手は出されない限り出さないから安心してね。」

「今日クラスメートの他にも絡まれたの。」

「…新学期早々、肩にぶつかって来たり舌打ちされたり、ずっと辛い…兄って知られてずっとだよ、毎日妬まれ‥嫉まれ‥暴言吐かれ、他人に言われても気になること無かったけど、新学期始まって、他人に言われて気になることが増えて、心が折れそう…正直家でも凜の前でニコニコするのも疲れたよ。」

「晴くんに迷惑掛けてごめんね、隠すから、私が…」


凜の言うことを遮って、晴斗は怒っていた。

「凜は自分が悪いって言おうと思ったよなぁ、絶対言うな。」

「…ごめんね。」

「五時間目は一人にさせて、落ち着きたい。」

「私も一緒居る。」

「二人がクラスから居なくなるとおかしいんだよ…凜は教室に戻ってね。」

「…ここで休むの。」

「保健室で横になるよ、先に凜は教室に行って。」

「顔色悪いよ、一人で大丈夫なの。」

「凜に相談したら、安心して顔色悪くなったのかな。」


キスされ、ぎこちない笑みを送って、凜を先に教室に戻らせた。

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