第129話ハプニング

部活見学から家に帰ると皆リビングで休んでいた。晴斗はお風呂の支度をして戻ると、凜と麻莉菜はエプロンを着て台所で晩御飯の支度をしてたが、晴斗は離れて二人を見ていた。

「本当に麻莉菜もご飯作れるんだな。」

「晴兄バカにしてるでしょ。」

「してないよ、明日麻莉菜が弁当作ってよ。」

「いいよ。」

「冷凍食品だけとか止めてね。」

「しないよ、私一人で美味しいの作るからね。」

「楽しみにしてるよ、今日の晩御飯なに。」

「ハンバーグだよ。」

「見てて良いかな。」

「良いよぉ。」


麻莉菜の手元を見に行くと、玉ねぎを切るとひき肉と混ぜ、牛乳やニンニクすりおろしも少し入れ、塩コショウで味付けしてタネを作っていた。

「晴兄いつまで見てるの。」

「上手だなって終わるまで見てたい。」

「飽きるまで見てて。」

「許可貰うと飽きたな、座って待ってるよ。」


晴斗はソファーで横になってテレビを見ていた、ハンバーグが出来たのか、凜に声を掛けられ、三人でテーブルを囲んでいた。


ハンバーグの横にブロッコリーとポテトもニンジンも付いていた、焼いたのは凜、タネまで作ったのは麻莉菜だった。デミグラスソースのかかったハンバーグをナイフで切ると肉汁が出て、フォークで刺して口に運ぶと、目の前に座る麻莉菜はこっちをジーっと見ていた。

「何で見てんの、食べにくいんだけど。」

「か、感想は…」

「切るとふわっとして、食べるとジューシーで本当に美味しいよ。」


麻莉菜は「やったぁ」と小声で言ってたが、晴斗にも凜にも聞こえていた。

「可愛い声でやったぁって聞こえたぞ、褒められると嬉しいか。」

「…う、嬉しいよ。」


晴斗は隣に座る凜に足を蹴られたが、晴斗は凜の耳元で「麻莉菜も頑張ってたし…凜の焼き方で美味しくなったんだね」と小声で教えていた。

「晴兄なに話してたの。」

「麻莉菜も頑張ってたなって話してたんだ、麻莉菜のは卵が乗ってるんだな。」

「ほら、チーズも乗ってるんだよ。」


麻莉菜のハンバーグだけ、スライスチーズと半熟の目玉焼きを乗せていた。

「麻莉菜だけずるいぞ、俺にチーズは無いのか。」

「晴くん、子供みたいなこと言わないの。」

「晴兄は子供だぁ、一口だけあげるよ。」

「今俺は子供だからあーんしてくれないと溢すかもなぁ、あぁ‥麻莉菜は子供だから、あーんは恥ずかしいよね。」


晴斗が楽しそうに笑うと、麻莉菜はハンバーグを一口サイズに切ってフォークに刺すと、頬を染め静かに口元まで差し出してきた。

「可愛い麻莉菜が食べさせくれるんだぁ、俺子供なんだよ、あーんって言ってくれないと、いつ口開けたらいいか分かんないなぁ、言うのが恥ずかしいよね、ごめんね。」


晴斗が言うと、麻莉菜は一度座ってもう一度立ち上がると耳まで真っ赤になり「あ~ん」と震えた声で言うと、食べさせてもらった。

「まろやかで美味しい、麻莉菜も料理が上手だね。」

「……あ、ありがと。」


麻莉菜は俯いてお礼を言うと、晴斗は自分のハンバーグを一口サイズで切ってフォークに刺すと、麻莉菜の口に差し出していた。

「次は麻莉菜の番だよ、あーんして。」


麻莉菜は口を開けると自分で「あーん」と言っていた、恥ずかしいのかフォークごと噛んでいた。

「フォーク離せ、俺が食べれないだろ。」


フォークを返してもらうと、晴斗はまた自分のハンバーグを食べ始めたが、凜は横から睨んでいた。


晴斗は横をチラ見して「あっ」と声を出すと静かに食べ始めたが凜に「晴くん」といつもの優しい言い方ではない声で何度も呼ばれた。


ハンバーグから目を離さず返事をすると、頬に熱いハンバーグを押し付けられた。

「熱…」

「はい、晴くんあーん。」

「急に押し付けんなよ、汚れたから拭いて。」

「先にあーん。」


食べるとティッシュで頬を拭かれ、凜は怒ってたが、麻莉菜の前で凜の頬にキスしていた。

「火傷したらどうするつもり…次は怒ってても口にキスするからな。」

「…う、うん‥ごめんね。」

「凜も口開けて。」


麻莉菜には凜にキスしたことで「最低」と言われ、麻莉菜は急いで食べ終わると、怒ってリビングから出ていった。

「何で最低って言われたんだ、麻莉菜に何もしてないんだけど。」

「……な、何でだろうね。」

…凜は理由知ってるんだな。


凜は少し表情が笑っていたが、気にせず二人も食べ終わっていた。晴斗は食器を二人分流し台に持っていくと、凜を抱き締めソファーの横で一緒に横になった。

「…ま、麻莉菜が来ちゃう。」

「部屋から出て来ないと思うよ。」


凜の手を取り、晴斗は胸に当てさせていた。

「…晴くんもドキドキしてるね、顔真っ赤だよ。」

「凜も真っ赤だな、少しだけキスマーク付けさせて。」

「ダ、ダメ。」

「お願い。」

「……つ、付けるだけだよ。」


晴斗は股がると凜の服をめぐり、下着にも胸に興味を持たず、鎖骨にキスマークを付けていた。

「凜はモテるからね、マーク付けると安心するんだ。」

「…晴くんもモテててるんだよ。」

「違うだろ、声掛けられないし。」

「…声かけにくいんだと思う、晴くんたまに怖いもん。」

「たまに絡まれたんだ、月城さんに近付くなとか彼氏なのかって、色々聞かれるんだ…身内のことに他人が口出すなって言って、イラついて歩いてることが多かった。」

「…私のせいでごめんね。」

「別に気にしてない。」

「…私も付けたい。」


晴斗は鎖骨のキスマークを見せて聞いた。

「これ、ずっと消えないんだ、黙ってたけど寝てるとき付けたのか、鎖骨に付けさせたこと無いよね。」


急に凜はギュッと目を閉じて…教えられた。

「……黙って‥付けました‥ごめんなさい。」

「凜なら良いんだけど、何で黙って付けた。」

「…晴くん起きてると‥嫌がるでしょ…寝ると中々起きないから見えない場所に付けて、自分で付けた跡見ると安心するの…晴くんは私のなんだよ‥怒らないで。」

「怒らないよ、目を開けて。」


凜が目を開けると、股がったままキスしていた。

「一緒にお風呂入ろ。」

「…ダメ。」

「最近お風呂もイタズラもダメって言うよね。」

「……もう、二人暮らしじゃないんだよ。」

「なら、キスはさせてね。」

「うん、好きなだけして。」

「そんな言い方するから‥イタズラしたくなるんだよ。」

「…晴くんいつまで我慢するか見てるの。」


楽しそうに笑われると、晴斗は首を少し吸っていた。

「やめて。」

「付けないよ、ごめんね。」

「いいよ。」


凜が大声を出したからか、急にガチャっとドアが開く音がした、股がったままの体制でドアに視線を移すと麻莉菜と目が合って、晴斗も凜も固まっていた。


麻莉菜はお風呂に入ってたのか髪が濡れていた。麻莉菜は近付いてくるとパチンと晴斗は頬を叩かれた。

「私が来ないと襲ってたでしょ、最低。」

「誤解だよ‥俺襲わないよ。」

「晴兄がそんな人って知らなかった、本当に最低だよ。」


いつもの優しい声でも可愛い顔でもなく、麻莉菜はキレていた。

「誤解なんだよ、凜に聞いて。」


またビンタされ、晴斗は麻莉菜の腕を掴んだが「汚い、触らないで」と言われ、手を離していた。

「……凜‥誤解解いてよ。」

「麻莉菜誤解してるよ、晴くんスキンシップが激しいんだよ、首にキスしてこようとしたから、やめてって言ったの」

「襲われて叫んだんでしょ。」

「違うよ、晴くん抱き付く癖があるでしょ、麻莉菜にも抱き付くでしょ、晴くんたまにキスしてくるの、だからやめてって叫んだの、本当に何でもない、私が大声出しただけなの。」

「でも…」

「麻莉菜は晴くんのこと知らないでしょ、たまに変態な所があるけど晴くんは襲ったりしてこないよ。」

「本当に今まで一度も襲われたりしてないの。」

「ないよ、晴くんを悪く言わないでよ。」


凜と麻莉菜は言い合ってたが、変態、最低と心を折れそうになるまで聞くと、一人で寝室に戻ってお風呂の準備をしていた。

…変態、襲った、襲われてないって何回目の前で言うんだよ。


晴斗はお風呂から上がると寝る準備をしてリビングを覗くと、二人は椅子に座って楽しそうに笑って話していた。

「…凜も風呂入ったら、俺は寝る…麻莉菜ごめんね‥二人ともお休み。」


麻莉菜は近付いてきたが、晴斗は逃げるように寝室に入ると鍵をかけ、麻莉菜に呼ばれても無視して目を閉じていた。


30分程すると、凜は鍵を開けて寝室に入ってきた。

「晴くん大丈夫、真っ暗だよ。」

「ごめん‥豆電球点けるの忘れてた…今日は風呂早いね。」

「晴くんが心配だったの。」


凜は豆電球を点けると、抱き付いてきて、頭を擦られていた。

「…晴くんが襲ったりする人じゃないって言ったよ、両親が亡くなって寂しい思いをして、私が家族になって、スキンシップが激しいだけって教えたよ。」

「激しいだけって、普通の兄妹ってのが‥分かんないんだ、俺は俺なんだよ、他人と比べるな。」

「旅館で幼なじみと一緒にお風呂に入ってるって聞いた時、晴くんは本当に変わってるって思ったよ。」

「旅館の皆は保育園からずっと知ってる‥家が近所だった、中学の時もたまに遊びに行って、勝手に風呂に一緒に入ってた、勝手に一緒に寝てた、本当に兄妹みたいな感じなんだ…幼なじみも俺が変わってるって言うけどね、もう普通が分からない、家族って何だろうって‥たまに思うんだ。」

「晴くんは晴くんだよ、私は晴くんの妹で彼女なんだよ。」

「…もう考えたら疲れた‥一緒に寝よ。」

「私が傍に居るから、安心して寝てね。」

「ありがとう。」


晴斗は凜の胸に顔を埋め、抱き締めながら鼓動を聞くと、二人は眠りについた。

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