第97話送ると…
麻莉菜を家まで送り届けると、見せたいものがあると言われ、バイクを止めていた。
美香さんの車が止まっていなかった。
「美香さんいないのか。」
「多分買い物かな。」
麻莉菜は家の鍵を開けると、2階の部屋に案内され、机の上に女の子らしいピアスケースを持って楽しそうに、自分で買ったピアスを一つ一つ見せていた。
「おこずかいで2つ増えたんだよ、晴兄はどんなの付けるの。」
「最近付けてないよ‥貰い物が多いから何でも付けてた。」
「私が付けれそうな物でいらないピアスないの。」
考えても思い出せない晴斗は、あったら持ってくると答えていた。
「俺の幼なじみが付けてたピアスでも欲しいか。」
「欲しい。」
「今度、幼なじみの家に泊まりに行くから、貰ってくるよ。」
泊まりと聞くと、麻莉菜の目は連れていってと訴えていた。
「いつ頃行くの。」
「内緒、麻莉菜は連れて行けないよ。」
「…そっか、凜姉ちゃんも泊まるの。」
「俺の幼なじみなんだけど、来ると思うか。」
「人見知りな所があるから、お姉ちゃん行かないね。」
…幼なじみの旅館に行くんだけど、二人の秘密だから言えない‥ごめんね。
晴斗は心の中で何度も謝っていた。
ピアスを直して机の上に置くと、麻莉菜はチラッと晴斗を見て、目が合うと頬を染め、恥ずかしそうに聞いてきた。
「……晴兄は彼女‥‥居ますか。」
…中学生だし、二人だから聞くのが恥ずかしいのかな。
急によそよそしい態度で聞かれたが、触れずに「いるよ」と答えていた。
どんな人なのか聞かれ、凜なんだよと、笑いながら教えたが…
…しまった、秘密だったんだ。
麻莉菜は冗談と捉えていた。
「本当にからかうの好きなんだね。」
「凜から聞いたのか…どうだろうね。」
麻莉菜は二人が泊まりに来た日…晴斗がお風呂に入っている間に、凜と部屋で晴斗の話しをしたようだった。
そっぽを向いて、晴斗に聞いていた。
「…凜姉ちゃんに聞いたら、晴兄は彼氏じゃないって言ってたよ。」
「俺は彼女だと思ってるよ…何で恥ずかしそうに聞くんだよ。」
消え入りそうに「…知りたかった」と言ったが、静かな部屋では晴斗に聞こえていた。
「そうか、知りたかったのか、恥ずかしそうに聞くことでもないぞ。」
「……」
静かに佇んでいる麻莉菜の後ろ姿を見て、晴斗は凜とメールのやり取りしていた。
麻莉菜が恥ずかしそうに佇んでいると、ドアが開いて美香さんが入ってきた。
「晴斗くん来てたんだね、凜ちゃんどこ。」
「学校にいるよ、麻莉菜に呼ばれて早退しましたよ。」
ピアスを没収してもらって、わざわざ早退する優しい兄だと、自分で言って笑っていた。
「……晴兄‥ばらさなくても、早退したって言わなくていい。」
「本当のこと言ったんだけどね。」
美香さんは、娘が佇んでいると顔を覗きに行っていた。
「どうしたの、熱でもあるの。」
晴斗も直ぐに、顔を覗きに行って、麻莉菜のデコを触って熱があるか調べていた。
「さっきより顔が赤いけど、スカートで乗せたから風邪引かせたかな‥ごめんね。」
晴斗の言葉を聞いて、美香さんは麻莉菜の顔をジーっと見て、晴斗も麻莉菜を見ていると目が合い、何故かニコッと笑みを向けられた。
「麻莉菜、後で話をしましょうね。」
…早退させたから美香さんから怒られるんだな。
「怒られる姿見たくないし、帰りますね。」
鞄を持って帰ろうとすると、美香さんに止められていた。
「晩御飯食べて帰ろうね。」
美香さんから不適な笑みを向けられて、晴斗は直ぐに「ハイ」と元気よく返事をしていた。
…凜に連絡しないと、寂しがってるかもな。
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