第86話ピアスを渡す

晴斗はバイクを一時間走らせ、凜と玄関の外に立っていた。

「…プレゼント、喜んでくれたらいいね。」

「いらないって、言われたら‥ショック。」


二人で話をしながらインターホンを押すと美香さんが出てきた、家の中に上がると、リビングで麻莉菜はホットケーキを食べていた。


晴斗と目が合うと、麻莉菜はそっぽを向き、ホットケーキを食べ始めるが、横目で見られていた。

…こっち見てるの、バレてるんだよなぁ。


凜と近づき、正面に座り無言で見ていた。

「晴兄何で来たの、凜姉ちゃんも。」


麻莉菜はホットケーキに視線を向けたまま、そっけない態度で聞いてくるが、口元がにニヤついていた。

…笑うの我慢して、来たのが嬉しいんだろうなぁ。

「麻莉菜が電話に出ないし、機嫌直して。」

「私、怒ってないよ。」

「いつもの可愛い声と違うよ、今日忙しかったからさ、今の時間にしか来れなかった。」


麻莉菜は時計を見ていた、時刻は16時半。

…まぁ、家でのんびりしてたんだけどね。

凜も麻莉菜に今日は忙しかったと言い聞かせていた。

「…二人は‥泊まってくれる。」

「帰るよ‥可愛い麻莉菜にプレゼント持ってきた。」


晴斗は断りながら隣に座り直して、鞄から出すと渡していた。

「開けていいの。」

「いいよ、麻莉菜のだからね、気に入ったらいいけど。」


嬉しそうに開けて、ピアスを見ていた。

「可愛い。」


直ぐに麻莉菜は、母親と兄の祐希に、晴兄ちゃんに貰ったと声が聞こえ、子供のように見せに行っていた、直ぐに戻って来ると隣に座り、ジーっとピアスをニヤニヤ見ていた。

「麻莉菜、気に入ったか。」

「…うん‥ありがと。」

「可愛い麻莉菜には桜の花が似合ってるよ、凜が選んだんだけどね、本当に似合ってる。」


ピアスを耳に当て、二人に見せていた、凜も似合ってると言うと、選んでくれてお姉ちゃんありがとう‥とお礼を言っていた。

「まだ慣れてないから‥晴兄が付けて。」

「付けてほしいなら正直に言えよ。」


麻莉菜の耳に付けてあげてると、目が合い、ぎこちない笑みを向けられた。

「似合ってる、学校に付けて行ってるか。」

「駄目だから、外してるよ。」

「真面目か‥ピアス付けてる人学校に居るよね。」

「普通に居るよ、たまに没収されてる。」

「もうすぐ卒業するんだし、最後ぐらい付けて行け、没収されたら言い返せよ。」


麻莉菜は恥ずかしそうに考えていた。

「没収されたら、親呼ばないと返してくれないんだよ‥晴兄が来てくれる。」

「来ると‥思う。」

「絶対に来てよね。」

「…あぁ‥来るよ。」


麻莉菜はなぜかニコニコして、小声で昼から晴兄と二人で遊べると聞こえた。

「なぁ、俺と遊べるって‥没収されに行くなよ。」

「へっ…行かないよ。」


麻莉菜の目が泳いでいたが、遊んであげようと思っていた。

話をしていると、18時になり、悟さんが仕事から帰って来た。

「二人は泊まって帰るよね、家に帰っても二人だしさ。」


悟さんに笑って言われ、麻莉菜に聞かれていた。

「二人って何。」

「誠父さんと優樹姉が、仕事で遅いってことだよ」

「そっか、連絡して泊まって帰ってよ。」

…心が痛むなぁ。

「凜どうする。」

「…泊まって帰ろ。」


凜が答えると、麻莉菜は子供のように、やったーと喜んで凜に抱きついていた。

…もうすぐで、高校生が嘘みたいだな。

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