第48話どこが、新婚

恵を連れて家に着くと、エコバッグを持って買い物に向かった。


スーパーに着くまで、三人は話をしていた。

いつものように、凜は食べたい物を聞いていた。


「モツ鍋に食べたいな。」

「…前に言ってよね‥いいよ。」

「明日は、野菜炒めでも、なんでもいいよ。」

「…二日分ぐらい、食材買っとこうね。」

「いいよ。」


晴斗は一人で飲み物を選び、戻ると呼ばれた。

「晴くん…卵がお一人様1つ限りだって、安いから2パック買っとこうね。」

「朝食べたり、弁当にも使うから買っとこ。」


恵は一歩下がり、二人は並んで買い物を続けた。

レジで会計を済ませ、エコバッグに詰めていた。


恵は呆れていた。

「…二人を見てたけど、買い物中もイチャイチャですか。」


二人は困った表情を向けていた。

「普通に買い物してた‥だけなんだが、なぁ凜。」

「…うん、いつもと変わらないけどね。」

恵は呆れていた。

「…夫婦のやり取りだからね。」


恵にも少し持ってもらい、家に帰ると、二人はいつものように、挨拶をしていた。

「凜、おかえり。」

「ただいま…晴くんもおかえり。」

「ただいま。」


二人は、荷物をリビングに持って行くと、玄関にまだ立っている恵に声を掛けた。

「いつまで突っ立ってんの。」


恵は挨拶をして、リビングに入って来ると、二人を見て言った。

「…二人にビックリしてる。」

「そうか、着替えて来る。」

「私も着替えて来るね。」


二人は寝室で一緒に着替えると、リビングを見渡してる恵に声を掛けた。

「なんか周り見てるけど、良いものあったか。」

恵は小首を傾げ聞いてきた。

「ねぇ…二人暮らしだよね、家具も新品。」

凜は恥ずかしそうに答えていた。

「…そうだよ。」

晴斗は笑っていた。

「俺は一言も、親と暮らしてるって言ってないからね。」

「確かに。」


二人が話をしている間に、晴斗は洗濯物を寝室に持っていき、畳み終わると、リビングに向かった。

「凜ちゃんの部屋見せてよ。」

「…だめ。」

…部屋見られると、二人で寝てるのバレるなぁ


「なら晴斗くんの部屋見せてよ。」

「無理だね。」

「やらしい本とか持ってるから、断るのかな。」

「それは…凜に聞いてね。」


凜は断れなかったのか、晴斗に視線を向けていた。

「恵に部屋見せたら、誰にも言わないと‥思うし。」

「…晴くんが、そう言うならいいよ。」

「凜ちゃんの部屋見せて。」


晴斗はリビングのソファーに座ってテレビを見ていた。

凜が部屋を見せに行くと、恵は呆れて、凜は恥ずかしそうに戻ってきた。


「普通の部屋で、面白い物、無かっただろ。」

恵は少し笑っていた。

「…いや、一緒の部屋だとか、思わなかったよ。」

「そうか、凜が一緒の部屋が良いって言うからね。」

凜は顔が真っ赤だった。

「…別にそこは、言わなくていいよね。」

「なんか買い物中、会話が夫婦だからね…家が新婚の雰囲気だからね。」


晴斗は笑いながら、凜に視線を向けると俯いていた。

「俺には良くわからんけど、らしいよ。」


恵が凜と話すと、目が潤んでいた。

「…やっぱり、呼ばなきゃよかった。」

「別に誰にも言わないからね。」

「…ホントに言わないでよ。」

「泣かないで、ホントにごめんね。」

「えっ、凜おいで…恵泣かすなよ。」

「凜ちゃんごめんね。」


恵は、凜を晴斗に渡した。

凜は抱き付くと、晴斗はブランケットを、凜に被せると、泣くのを我慢していた。

「…泣いてない‥もう誰も呼ばない。」

「凜が呼んだんだから。」

「凜ちゃんごめんね、もう来たら‥ダメなの。」


凜は少し笑って答えた。

「…恥ずかしかっただけ‥見たから来ていいよ。」

「凜ちゃんありがと。」

晴斗も笑って答えた。

「恵…凜から入室許可貰って良かったね…あと座ったら。」


凜も笑って、晴斗に抱き付いたまま離れなかった。

恵は晴斗の隣に座り、凜を見て笑っていた。

「恵、高校生の甘えん坊が居たぞ。」

「凜ちゃん可愛い。」


凜は恵と目が合うと、晴斗の首に顔を付け、表情を見せないようにしていた。

「…二人とも、うるさいよ。」

「二人は家で、こんな感じなの。」


晴斗はニコニコして答えた。

「こんな感じだよね。」

「…うん」

「二人、学校とは違うね、晴斗くんは警戒心が強いけど、家では表情が柔らかいね。」

「俺はそうかな、凜には優しいよ‥好きだし家族だからね。」

「…私も晴くんに、甘えるよ大好きだから。」

「見てると、気分悪くなる。」


晴斗と凜は、笑っていた。

「私、邪魔かな‥帰ろうか。」

「別に邪魔じゃないよね。」

「…全部見られたし、居て良いよ、恥ずかしいけど。」


晴斗は思った事を聞いていた。

「恵の家はどこ。」

「歩いて、5分ちょいかな。」

「マジで。」

「マジだけど。」


晴斗と凜は苦笑いして顔を見合わせていた。

三人で話をしていると、17時になった。

凜はご飯の支度をして、晴斗はお風呂の準備をすると、リビングに向かった。


「恵も遠慮せずに、モツ鍋食って帰るか。」

「…多めに買ってるから、遠慮しないでいいよ。」

「甘えて、食べて帰るね。」

「親に連絡しといて。」


モツ鍋を作り終えると、リビングで3人で食べていた。

「凜ちゃん、美味しいよ。」

「…そうかな、ありがと」

「まぁ、いつでも来たらいいよ。」


恵は、二人を見て言った。

「家では、二人の雰囲気が新婚だね。」

凜はニヤニヤが止まらなかった。

「…そうかな。」

「何で嬉しそうなん、そこは違うって言えよな。」

「…晴くんも嬉しいでしょ。」

晴斗は呆れていた。

「全然、新婚でもねぇよ…恵頼むから、凜に変なのと言うなよ、本気にするから。」


「凜ちゃん‥私帰るから、二人で楽しんでね。」

「…うん‥またね。」


食べて終わると、恵はお礼を言って帰った。

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