第28話最後の仕事
シリアから1週間後の日本、総理官邸。日本の政治の中枢の此処で、総理大臣と女房役の官房長官が総理大臣執務室で二人だけの密談をしていた。
▫️▫️▫️
「菅野さん、公安からの報告書だが、間違いないのかね?」
「はい。労働平和党の中内代表を始め、菅田、木下、福岡の三幹部に加え、創世民主党の是枝も例の料亭に集まり話し合いの場を設けたみたいです。」
「いよいよ、動くか。」
「私はオリンピック終了直後かと思っていました。」
「彼等は余裕がないんだよ。焦っているのさ。だから危険な賭けに出ようとしているのかもな。だが、恐らくは前哨戦があるばすだ。
片桐君がちょくちょく雇っているヤクザでは勝負に成らないだろう。
自衛隊のS班を出すのは早い。別の手を考えているんだがね。」
阿賀野の顔を不思議そうな表情で菅野は見る。
「別の手ですか?」
「ああ、新沼君に頼んであるから心配ないさ。引き続き中内を始め労働平和党の主要幹部と、民主党の幹部双方の監視を怠らないよう、公安に指示を出してください。」
「解りました。」
その一方で、阿賀野総理に不満を持つ者が別に動こうとしていた。
🔹🔹
「新堀の件は大した警告にはならなかったな。総理は心配ないと言ったが、やはりこのままと言うのはな......。ふぅ。」
40代後半と思われる男は溜め息を漏らす。
「片桐さん。片桐さんには、その筋の凄腕が付いてるそうじゃないですか。内乱を起こそうとしている、強硬派の筆頭木下を消すべきなんじゃないですか?」
「前田さん、気持ちは分かるがね。向こうも警戒しているはずだ。」
前田と呼ばれた男は強く片桐に対応を迫った。
「モタモタしていたら、東京が戦場になる恐れがあるんですよ。お願いします!これは自由共和党若手を束ねる中川先生の意志でもあります。」
「中川先生が?そうか。確かに総理の行動は遅い。解った。頼りにしている筋に頼んでみるよ。」
その日、片桐は自身の議員事務所である人物に連絡を取っていた。
「ああ、また頼むよ。今度は大物だ。ああ、解っている。これは総理も官房長官も知らない事だ、内密に頼む。ああ、礼を言うよ。」
スマホの通話を終える。
「奴等の好きにはさせん。この時点で総理が動かないなら、こうするしかないさ。」
東京。中野区江古田。学生の街として知らるが、住宅街から少し離れた場所に。日本有数の広域指定暴力団、竜星会のトップが齋藤住む本部兼自宅がある。
「親父、仲介役の堀井から、始末の依頼が入りました。」
若手の組員から電話の受話器を斎藤は受け取る。
▫️▫️
「そうか。どれ。おう、俺だ。」
「また、あの先生から依頼がありまして。今度のは大物です。」
「ほう、で、誰だ?」
「労働平和党幹事長、木下学です。」
沈黙する齋藤。
「........そうか。遂に来たか。解った。信頼している奴に任せる。今まで1度もヘマをした事がない奴だ。安心して待つよう伝えてくれ。」
アッサリと返事をする斎藤に、堀井はやや驚きながらも返す。
「躊躇するかと思いましたよ。」
「はっはっは。長い付き合いだからな。此処まで来たら、一蓮托生さ。心配なぞしておらんよ。」
「豪胆な人だ。感謝します。それでは。」
「おう、先生に宜しくな。」
通話を切ると、齋藤の目付きは鋭くなった。
「氷室に連絡しろ。仕事だとな。」
その日夜。
零士のスマホに着信が鳴る。
🔹🔹🔹
「俺だ。」
「ふふっ。早いな。すまない霧ちゃん。引退する前に引き受けて欲しい仕事があるんだ。」
(やっぱりそうなるか……多分大物だな……)
「分かった。話しを聞かせてくれ。」
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