第18話新たな出会い
アイルランド西方、ゴールウェイ湾に浮かぶアラン諸島。その諸島で1番大きな島、イニシュモア島。
面積31平方km人口840人余りの遺跡などがあるのどかな島だが、この島の南端にある広い屋敷の地下にヴァルハラの訓練施設が存在する。まさに秘密基地と言う感じの場所だった。
咲は凄い凄いを連発している。ホテルに1人で居るより良いでしょと、有香は同行させてくれた。
ダブリンから車で3時間、更に船での移動。前日まで色々忙しかった事もあり、零士の目には心なしか有香もやや疲れた顔に見える。
地下の施設は広大で、マップを渡されたものの、零士が入れるエリアのみだと説明を受けた。
咲はゲンと一緒に託児場で見た事もない玩具で遊び、その間に零士は有香と訓練場に向かう。マップを見ながらの零士に、有香が説明する。
「地下は50メートルまで続いていて、広さは確か東京ドームより広いはずよ。
訓練場は射撃や格闘に降下訓練、潜水訓練場もあるわ。サイバー戦訓練用のPCルーム。
他に医療関係や装備品の整備所に倉庫。
私はここに来て3年になるけど、全て把握してる訳じゃないの。迷わないようにね。」
「あ、はい。」
(かなり広いよ、いったいヴァルハラってどんだけ金持ちなんだ?)
そんな疑問を持ちつつ、訓練場に着く。
すると、190近い身長はあるスキンヘッドで中年の男が1人近いて来る。その男を笑顔で紹介する有香。
「この地下訓練施設の名物男、射撃場責任者のアルビン.トッテンさんよ。私も最初はこの人に銃の扱い方を習ったの。」
「有香から話しは聞いている。よろしくな坊主。そうだな、まずはこれから苦楽を共にする相棒を決めてもらおうか。好きな銃を選びな。」
そう言うとトッテンは3丁の拳銃を目の前のテーブルの上に並べた。
「右からシグ*P226 、*グロック17、*ベレッタM92F。どれも扱い易い良い銃だぜ。」
▫️▫️▫️
*シグP226はスイスのシグザウエル社が開発したP220を、ドイツのザウエル.ゾーン社によって安全装置と装弾数を改良した拳銃。装弾数15『薬室内に事前に装填すると+1』P220は9発+1
*グロック17はオーストリアのグロック社が開発した全体にプラスチックが多用されているのか特徴の拳銃。装弾数17+1
*ベレッタM92Fは、イタリアのベレッタ社が開発した拳銃で、ベースは1970年代開発と古いが信頼性の高さから各国の軍や警察で採用されている。装弾数15+1
と言っても、零士は銃の性能はサッパリ分からなかい。だが、不思議と真ん中の銃が扱い易い銃だなと手が伸びた。
「お、意外に迷わなかったな。それが良いのか?」
「銃の性能は正直分からないけど、この銃が1番違和感が無いなって思いました。」
するとは大笑いするトッテン。
「はははっ、こいつは驚いた。おい有香、お前さんがここに初めて来た時の事を思い出したぜ、この坊や見込みがあるかもな。」
有香はちょっと困ったような表情をしている。
「覚えてないわ。零士君。射撃場に入りましょうか。」
有香に連れられ射撃場に入ると、まだ若い訓練生が3人見えて来る。向こうも
「あら、ロウにミハイルにリヴとは珍しい組み合わせね。丁度良いわ。彼が今日から訓練を受ける霧島零士君。
長身でモデルのような顔立ちの少年が軽く挨拶する。
🔹🔹🔹
「宜しくな。俺はミハイル.スヴァーロフ。ロシア系ドイツ人だ。」
次にラテン系と思われる女性が。
「私はリヴ.テイラー。スペインとアメリカのクォーターよ。ポーランドでの事は聞いてるわ。辛かったでしょうけど、しっかりね。」
隣の青年が続く。
「俺はロウ。エリオット.カーヒル.ロウ。
エリオットって呼ばれるのは好きじゃないんだ。みんなロウと呼んでいる。
君もそうしてくれ。一緒に頑張ろう、零士君。」
緊張した感じで返事をする零士。
「は、はい!宜しくお願いします!」
そこにトッテンが入って来た。
「良いか坊や、最初はあまりを力を肩に入れないようにな。銃を保持する手をしっかり持て、左手は右手を支えるように、そうだ。」
初めての射撃訓練だったが、結果は散々だった。トッテンは笑いながら話す。
🔹🔹🔹
「はっはっは。まぁ、最初はそうだわな。これは繰り返し訓練するしかないさ。」
「はい……」
続いて慰めの言葉をかけるロウ。
「俺やミハイルも最初はそんな感じだった。アメリカで銃の経験があったリヴは上手かったがな。」
「毎週オヤジに射撃場に連れ出されたわ。私は友達と遊びたかったのにね。」
ミハイルは
「銃を自分の物に出来た時の感覚ってのがあってな。それが分かった時は快感だった。それを
「は、はい!ありがとうございます!」
有香がふふっと笑う。
「ふふっ。ミハイルがそんな事を言うなんて珍しいわね。意外と優しい所もあるんだ。」
突然日本語になるミハイル。
「ちょっ!それじゃあ俺が普段優しく無いって聞こえるぜ、有香さん。」
「ごめんごめん。そんなつもりじゃないの。」
「ミハイルさん日本語上手いですね。それに有香さんと同じ歳くらいなのに敬語なんですね。」
「ん?ああ、日本語は有香さんとゲンさんに教えてもらったよ。その、日本語で言う所の先輩だし、正規隊員だからな。オマケにセイバー隊の隊長だ。俺より遥かに強いぜ。見て来ただろ?」
「ああ、なるほど。」
その日は2時間程射撃訓練をし、その後は座学となった。
ヴァルハラの歴史から各国の支部等々。
それから食事も終えて、トッテンから再びグロック17を借り、零士は再び射撃場に脚を運ぶ。
モニターでトッテンが見ているとは言え、さっきとは違い誰も居ない訓練場。零士はグロック17を手に取り構える。
最初の数発はやはり外してしまったが、5発目にしてやっと20メートル先の的に命中。すると突然後ろから日本語が聞こえて来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます