第310話 タグ付きスカート(青)、ハンドメイド!

 カリンが指で示したのは、タグのような物だった。いや、タグだ。そういえばこのスカートの材料は俺の部屋のカーテンだった。


「炎の絵に斜め線が入っています。もしかしてこれは……」


「もしかしなくても、その通りだよ!」


 俺は思わず笑い声をあげた。安心したためにちょっと気がゆるんだのだ。力が抜けて、カリンのそばに膝をつく。


「ヒロキ、大丈夫ですか?」


「……ははっ。ああ、笑ってごめん。これは防炎って書いてあるんだ」


 カリンの言う炎の絵の下に赤字で防炎と書いてあった。


 そうか、俺の部屋のカーテンは防炎加工されてたんだ。それで作ったから、カリンの服は火のまわりが遅かったんだ。


「良かった……カリンが無事で」


「ヒロキ」


「カリン、俺、君に言っておきたいことがある」


 消火の水でぐしょ濡れだし、顔には煤も付いてるし、服も焦げてるこんな俺だけど、今のうちにカリンに伝えておかなくてはならない事がある。


 カリンも目を見開いた。


 彼女もびしょ濡れだし、長い金髪は焦げてるし、頬にも煤が付いてるし、全然絵にならないけど。


 俺はカリンの頬に着いた煤を親指でそっとぬぐった。


 心なしか彼女の頬が赤らんだ気がする。


「俺、君のこと——」




 そこへ、女神様の怒号が飛んで来た。


『いつまでそうしているつもりだーッ!こちらを手伝えッ!!』


 慌ててカリンから離れると、フォリア達のいる丘を見る。


「あっ!」


 いつの間にか巨大熊が聖なる丘に近づいていた。騎士団の弓隊が矢を射掛けるが、強靭なうろこがそれをはじき返し、足止めにもならない。それどころか遠くから炎を吐いて攻撃して来ていた。


「戻らなきゃ!」


 俺が立ち上がると、カリンも同じく立ち上がる。


「私も参ります」


「……もちろんだよ!」


 どちらからともなく手を差し出した。俺達は手を取り合って駆け出す。走りながら、これが最後の戦いになるのだと、俺は覚悟した。




 つづく

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