第303話 高校生の決断なんて、こんなもんだ!


 俺の言葉に、フォリアは顔を上げた。


 そして静かに俺の目線を辿たどる。彼女が息を呑むのがわかった。


『馬鹿な……!』


 すがるような瞳を俺に向けて、フォリアはうめいた。


『駄目だ、それだけは許さぬ』


「許さないってなんだよ」


『あの部屋は——あの部屋の魔力を私に戻すと言う事は、あの部屋が消えるということだぞ!』


「……だいぶ元気になったじゃないか」


『ふざけるな!あの部屋が消えるという事は……!』


「んー、まぁ、なんとなくは理解してるよ」


 俺は表情を変えないよう、必死に強がった。


『あの部屋でお前が復活するのは、お前の魂があの部屋と結びついているからだ。だから』


 フォリアは俺の腕を掴んだ手に力を入れた。




『だから部屋が消えたら、お前は此処ここには居られなくなる』




 やっぱりか。


「んー、そうなんだ。てっきり村人Aくらいにはなれるかと思ったんだけどな〜」


『ヒロキ、ヒロキ、それは嫌だ!』


 どうしたんだ、フォリア。そんなに取り乱すなんて、女神様らしくないぞ。


『そんなにもこの娘が大事か』


「んー、まあね」


『まあね⁈』


「いや、すごく大事です!……他のみんなもね。もちろんフォリアも」


 だから——。


 俺はフォリアの目を見ながら、言った。


「だからあの部屋の魔力を使ってくれ」





 フォリアは怒っていた。

 俺の事を『馬鹿だ、馬鹿ッ』ってののしりながら、俺の部屋に片手を向けた。その仕草しぐさが乱暴で、とても女神様とは思えない。


 俺の部屋は光に包まれ、やがてゆっくりと光の粒子になって、ただよいながらフォリアの身体に集まって来る。


 彼女の周りに小さな銀河を作るように渦巻くと、急に光を強めた。


 鮮烈な光を放ち、丘の頂上を中心にまばゆい光が放射状に広がる——。


 あまりの眩しさにつむっていた目を、恐る恐る開くと、そこにはいつも俺が見ている戦乙女の姿のフォリアが凛々しく立っていた。




 つづく

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