第270話 救助、救助!
黒い
ユリウスの左腕の鎧がメキメキと
「くっ……!」
ユリウスは剣を地面に突き刺すと、素早く左腕の
彼が左腕を引き抜くと同時に、牡鹿の口の中で、腕当てがぐしゃりと潰れた。
間一髪。
ユリウスは再び剣を手に牡鹿の前に立つ。
俺は制服の『なんちゃってネクタイ』を外して、デルトガさんの傷口を縛って止血する。
デルトガさんはショック状態でブルブルと震えていた。彼に肩を貸して、村まで連れて行かなければ。
腹に力を込めて、デルトガさんを
その瞬間、目の端に四角い物が映った。
——タイルだ。
探していた物を見つけ、心臓が跳ね上がる。しかし、どうしよう?——いや、今はデルトガさんを避難させる方が大事だ。
大体の場所を覚えておいて、後で取りに来よう。
そう決めると俺はゆっくりと歩き出した。
「デルトガさん、しっかり!すぐに村に入るから」
「う、うう……」
「俺、デルトガさんの援護が嬉しかったんだ。ホント助かったんだよ!」
「…………」
「デルトガさんッ⁈」
返事が無くなる。
急に彼の体重が俺にかかって来た。ふらつきながらも、なんとか支える俺。
そこへ村の入り口から人影が飛び出して来る。
「ヒロキ様!村長をここに……!」
グスタフさんと、コリンだ。
地面に置かれた
「コリン、村の中は?」
暴れている
「まだ…逃げてる……」
と、村の方を見ながら答えた。
「わかった。デルトガさんを頼む!」
コリンの背を押すと、それを合図に担架は走り出した。
俺は紋章のタイルを拾いに戻ろうと振り返る。
どこだ?
俺はデルトガさんの血の跡をたどる。村のオレンジ色の篝火に、血の跡は黒く見えた。
「あっ……た……!」
白っぽいタイルはその幾何学的な形もあって、大地の上でもはっきりと見えた。近くでユリウスと牡鹿がぶつかり合っている。
割れたら大変だ……!
俺はタイル目掛けて走った。
あと少しという時、ユリウスと牡鹿の戦いの場所が大きく動いた。タイルに近づいて来る。
俺は慌ててタイル目掛けて飛びついた。
俺の両手にタイルが収まる、その時——。
大きな黒い蹄が、俺の目の前で紋章のタイルを砕いた。
つづく
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