第264話 クロウよく出来ました!
クロウが
そのため、無理矢理操っていた黒い霧が消滅し、黒鷲が落ちて来たのだろう。
クロウって——。
「頭良いなぁ、お前」
クロウは「そうだよ」とでも言うようにカァ、と鳴いた。その反面、眼が見えないからもう出来ないよん、とばかりに気絶している仲間の方へ行ってしまった。
「あ……黒鷲はあと一羽か?」
「はい、村の方へ行ったものが……」
俺とカリンが村の方を見ると、網に
そのまま遠くから加圧式水鉄砲で銀聖水を浴びせて、戦意を削っているようだ。
しかしその上を最後の黒鷲がうろつき、隙あらば結界に体当たりを与えて来る。そちらも水鉄砲で追い払おうとしているみたいで、俺は心配になる。
「朝までに銀聖水が尽きるんじゃないか?」
「そんな……どうしましょう……?」
うろたえていたカリンが、はっと顔を上げる。
「この音——ヒロキ、あれを!」
その音は少し遅れて俺の耳にも届いた。
雷にも似た
『ククク、行けェ!』
カシラの声と共に鹿の群れが移動し始めたのだ。
黒い鹿——。
これもまた黒い霧の為に身体が巨大化している。中には馬みたいにデカい奴もいた。全身真っ黒で、たまに灰色のの斑点があったり、角がない個体もいたが、先頭切って走って来るのは角がある黒い鹿だった。
夕闇の中、地響きを立てて迫りくる黒い異形の群れは、その目だけ赤く光って異様さを際立たせていた。
しかも——。
「ヒロキ!あの群れは村の方へ向かっています!」
「なんで⁈村の方の結界が弱そうなのがバレたのか?」
おそらくそうだ。結界の反発の様子から推測されたのだろう。まずリール村を襲い、
村の方でも黒い鹿に気付いて、矢を射掛けたり、水鉄砲を放ったりしているが、怒涛の群れは止まらない。
「ああっ!!」
俺とカリンは声を上げた。ダズンも
黒い鹿の群れが
土壁に体当たりし——。
跳躍して結界に体当たりし——。
狼みたいな唸り声をあげながら——。
村の前は混沌とした地獄のようだった。黒い鹿達はその足元に、仲間の黒鷲が倒れ伏している事を歯牙にもかけず大地を蹂躙し、巨大化した蹄は無惨にも黒鷲を潰して通り過ぎて行く。
「——!」
カリンががくりと膝をついた。
「なんて……なんて酷いことを」
つづく
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