第151話 君の話を聞きたいです!


——ヒロキはすでに私を救っているのですよ。



「あ、ああ。そっか、黒狼を倒した時のこと?」


「いいえ、もっと前です」


もっと前?


「家畜…馬とかを何とかしたから?」


「いいえ、もっと前です」


なんだか彼女は悪戯いたずらっぽく笑みを浮かべている。


「町で3人組とあった時…」


これは俺の方も助けられたけど。

カリンは首を振る。

もっと前か。


「小屋の事?布の事?」


「もっと前ですよ」


「もっと前…わかった!食べ物を配った事だろ」


1番最初の事だ。

飢饉ききんでお腹が空いてて——。


「違います」


なんだよもう。

カリンの微笑みがだんだんイジワルに思えてきた。


「わかんないよ。俺の方こそカリンにいっぱい助けられたけどなぁ」


俺が白旗をあげると、カリンはとっておきの宝物を差し出す様に微笑んだ。


「ヒロキが私の目の前に現れた時です」


「?」


俺がこの世界に来た時に?

来た時は1番に黒狼に喰われたっけ…。

でもそれじゃないよな。


俺がきょとんとして立ち尽くしていると、カリンは俺の手を取った。


俺の両手を彼女の両手が支える。その暖かさとしなやかさに俺は内心うろたえる。


でも、カリンは俺の顔を見てない。頬を紅く染めてうつむいている。そしてゆっくりと話し始めた。




「ヒロキは現れただけで私を救っていたのです」



つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る