第141話 対立なんて…!

怖れていたことが起こった。


皆の気持ちが、希望が打ち砕かれるのが俺やフォリアにとっては大打撃だ。


地に膝をついたドルフを支えるように、彼の友人らしき村人が肩を貸す。カールが言う「村の兄さん達」だ。


確か名前はグランとかいったか。


彼もまた、村長に向き直る。


「村長、俺やドルフは考えていることがある」


「なんじゃ?」


彼はドルフと顔を見合わせ頷きあう。集まった村人達を見回すようにして話し出す。


「金があるうちに、移住してはどうだろうか?」




流石さすがにデルトガさんは激高した。


「馬鹿なことを言うな!村を捨てろというのか!」


「親父、このままではそのうちに皆餌食になってしまうぞ」


「村も、丘も、放棄などせん!」


「…固執して何になる。いや、もういい…」


ドルフとグランは肩を寄せ合ったまま人垣をかき分けて去っていく。幾人かがそれに続いた。おそらく同じ志を持つ者なのだろう。



「ヒロキ殿、お見苦しい所をお見せした。申し訳ない」


デルトガさんと奥さんのデボネアさんが俺に頭を下げて来る。


「そんなことはしないで下さい。俺にもっと力があれば、こんな事にならないのに…」


「あやつは分かっておらんのです。飢えて困っていた我らに食を与えてくれたのは誰であるか。いや、喉元のどもと過ぎれば、という事でしょうか…」


かなり落ち込んでいる。

無理もない。

ドルフは村長の跡取りのはずだ。それが皆の前で反抗したんだから、ショックだっただろう。


俺だって力が無い事をあからさまに言われたし、フォリアも駄目女神みたいに言われたし、怒りたい事はいっぱいあるんだが、なんかそれどこじゃないくらい村長夫婦はがっくり来ている。


そこへ呑気のんきな声が飛んできた。


「どうした?騒がしいが」


「ユリウス!どこに居たんだ?今大変な事に…」


声のする方を見ると、ユリウスの側に女子が2人ばかり寄り添っている。村を二分する騒ぎの最中に、コイツはどこで何をしてたんだ。(イチャイチャしてたんだな)


よく考えたらコイツもドルフ反抗の一因じゃないのか?


なんでこんな奴を頼らにゃならんのだ!?



つづく

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