第123話 ファンクラブ!
その日はいわゆる土曜日で。
つまり明日は大商人オットー・モレーン・コンスタンティンとの取り引きがあるのだ。
だから手の空いてる人を集めて菓子パンを習字紙で作った袋に詰め替えている。
「こ、こんな作業を私がするなんて…」
ユリウスがぶつぶつ言っているが、今は騎士の手も借りたい状態なのだ。
「ユリウス様、上手ですわ!」
エレミア以下ユリウスファンクラブの皆が彼を囲みながら褒めている。
時折、交代で小さく切った菓子パンを彼の口に運んでいるのを見ると、「なんなんだこのハーレムは!」と言いたくなる。
言いたいがひがんでいるみたいなので我慢だ。
「ヒロキ!こちらは準備出来ましたよ」
この月の最後の大市なので、今まで以上に賑わうそうだ。こちらも力を入れて売りに行こう。
「そういや前回はアイツらに会ったなぁ」
俺を刺した3人の男達のことだ。
「会っても無茶しないで下さいね」
カリンが真面目な顔で釘を刺してくる。
「わかってるよ」
アイツらのビビリ様を見ているから、再び会っても逃げていく気がする。
「あの3人なら町から出て行ったぞ」
ユリウスが遠くから声をかけてきた。
良く俺達の会話が聞こえたな。
地獄耳だ。
「出て行ったって?」
「まあ、人を刺しているからな。半ば追放に近い追い出され方をしたらしい。他にも悪さしていたんだろう」
じゃあ、アイツらに会う心配はないという事だ!
「今回は荷物が多いですけど、人手は増やしますか?」
カリンに言われてそうだな、とうなずく。
「俺とカリンとカール。コリンとエレミアは確定だろ?あとは…」
「待て!私も行くぞ!部隊長に定時連絡がある」
ユリウスが叫んでいる。
まあ、一緒に行くのはいいけど、手伝いはしないんだろうな。
「私も行きた〜い!」
「エレミアばっかりズルイわ」
「いいでしょう?ユリウス様〜」
ヤバイ。
女子が、いやファンクラブが騒ぎ始めた。
「えーと、みんなゴメンな。エレミアは
俺がそう言うと皆しぶしぶ引き下がる。本当はユリウスが他の日に町に行けば丸く収まるのだが。(そうすると今度はエレミアが来てくれなかったりして…)
残念がる皆とは対照的に、エレミアはニマニマしている。他の女子には見えない様に俺にハンドサインの「いいね!」を送って来た。調子がいい奴だ。
つづく
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