第117話 村の秘密!

ユリウスが来てから、少し生活が変わった。


以外にも彼は日中は騎士団としての仕事——丘の調査とか銀聖水の調査、村の周辺の事や村の歴史なんかの調査をしている。


合間合間にカリンに声をかけに来たり、俺が部屋の物を増やすのを見たりして、村では女子にチヤホヤされに行って——。


なんて言うかコッチの『リア充』みたいだ。マメなんだな。


相変わらずフォリアは現れてくれないが、銀聖水もまだまだたっぷりあるし、魔物の気配もないから仕方ない気もする。


俺としてはフォリアの姿を見せてユリウスには引き上げて欲しいものだが。


そんなおり、ユリウスから声を掛けられた。


「カリン殿も一緒に来て欲しい」




珍しい事もあるものだと、カリンと共に彼についていくと何のことはない、村を囲む土壁の所に連れて来られた。


石と土とを組み合わせて作られた壁はそれほど強度がある訳ではないが、今まで黒狼達から村を護ってきた実績がある。


「…だから、お前はなぜその事を不思議に思わないのだ?」


だって異世界だと思ったから。


…なんて言えないけど。


首をかしげる俺にユリウスは呆れたように溜息をつく。何度目の溜息か、数えるのはよしておこう。


「私はこの脆弱ぜいじやくな土壁でなぜ魔物が村に侵入しなかったのか、気になって調べてみた」


「しかし騎士様、『村』という成り立ちそのものが結界になるのではありませんか?」


カリンが疑問で返したのはコミュニティによる意思とか信仰とかの精神力による結界の事だ。


「人の想いは呪いを寄せ付けぬ事があります。それと同じようなものでは?」


「いいえ、カリン殿。この村の結界はもっと人為的な物です」


ユリウスは土壁の一部を指差した。


それは土壁に埋め込まれた石であった。10センチかける10センチ位の平たい石である。


表面の泥を彼が指先で落とすと、何かの文様が現れた。


「…鳥?」


俺のつぶやきにカリンが反応する。


「ツバメです!フォリア様の象徴の鳥…!」


カリンは胸元からあの小さな銀の御守りを取り出した。


何処かで見た事があると思ったら、カリンの御守りだったか。


それは石に刻まれた文様とそっくりであった。


「これと似たような石は村を囲む土壁に8枚、見つけた。これは人の手による結界だ」


「他の村や町では見かけないものなのか?」


俺は単純に他の村もそうなのかと思ったのだ。どこにでも安全地帯があるものだと。


「いや、初めて見た。お前達が倒した狼達は村に入ったことは無いのだな?」


それについてはカリンが答える。


「はい。壁際まで迫ってきても、中に入られた事はありません」


「よほど強い結界だな。それと…」


ユリウスはそう言いながらカリンの御守りを指差した。


「その御守りも古い物に見えます。もしかしたら昔から伝わる物なのではありませんか?」


つづく

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