第85話 3度目の自由市!

 そして日曜日。


 3度目の自由市だ。


 仕立てが間に合ったので、カリンは新しい服を着ている。


 デザインは前のと変わらないけど、色が少し濃いめの青になって新鮮だ。いつものごとく白いエプロンを付けている。(とてもカーテンから出来ているようには見えないのがスゴイ!)


 ペルに荷車を引かせながら、俺達は歩いて行く。(1度荷台に乗ったが揺れがひどくて歩く方がよっぽどいい)


 乗っているのはエレミアだ。

 荷台に御者台を付けてそこからペルを操っている。


「すっかり懐いちゃったな」


「えへへ〜」


 ペルが懐いているのかエレミアが懐いているのか。聞けばペルの世話を率先してしているらしい。


「コリンはニワトリの方を世話しているんだってな」


「ふふ……」


 お、可愛い。笑った。


「ひよこ…楽しみ」


「あーそっか。卵がかえったらひよこ見れるな」


「黄色い…ふわふわ…」


 コリンのほおがゆるんでいる。


「ヒロキ、油断するなよー」


 カールが割とマジな顔で言う。


「そうだな」


 前回の自由市を忘れたわけではないが、ちょっと気を抜きすぎたか。


 カールの言葉に気を引き締める。


 カリンが不安げに、


「またあの人達に会ったらどうしましょう?」


「そうそう、会わないだろう」


「そうだよ姉ちゃん。あいつら『ヒロキ殺し』で、追われてるんじゃない?」


 ええ?俺殺し?

 でもこの中世っぽい世界だと、そういうことも日常的にありそうだが。


 それについてカリンは悲しげに言う。


「人を殺めるのは大罪です。…もちろん起こりうる事なのですが、フォリア様は禁じておられます」


「あいつら騎士団が出てきたから見つかったら捕まるな」


 カールが言うにはいわゆる『現行犯』にあたるとの事。


「もしかしたらもう死刑にでもなってるんじゃない?」


 エレミアも物騒なことを…。


 そうやって話しているうちに町が見えてきた。



 つづく

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