第83話 そんなに変でしたか!

 洗ったものを干して乾かしていると、村から馬が引く荷車がやって来た。


「おはよう、ヒロキ!」


 エレミアだ。

 隣にはカールとコリン。


「おはよう。早速だけど手伝ってくれ」


 今日は毛布を村へ届けようと思っていたのだ。


 窓から出す方が効率的なので窓からどんどん外に出す。


 カールが受け取り、エレミアとコリンがたたむ。


 カリンが地面に敷いたシーツの上に並べて数を数える。


 そのカリンの姿を見て、エレミアが口笛を鳴らした。


「いいなぁ、新しい服ね〜」


「こ、これはヒロキが用意してくれたもので…」


「いーいーなぁ」


 ちょっとニヤニヤしている。


「でも、親父達が見たら怒りそうじゃね?その足を出してるのはなんだ、とか」


 カールが水を差す。

 確かに前の服に比べたらかなり露出している。


「あら、あんた意外と古くさい事言うのね」


「カリン姉ちゃんが悪く言われるのが嫌なだけだ」


「ばかねー。ヒロキのカッコ見なさいよ。あれぐらい変わってるんだからそのお嫁さんがあの服でもいいじゃない」


 ああ、俺の制服そんなに変だった!?

 もっと早く言えよ!


「違うの違うの!これは今だけで、ほらあの布で新しい服を作る予定なのよ」


「カリン、そんなに否定しなくても…」


 俺は窓越しに情けない声を出す。

(俺は可愛いと思ったのに)


「なんだ、そうなの?私は良いと思うけど」


 エレミア、ありがとう!


「そ、そんな事より予定の100枚出来ましたよ!」




 結局、カリンは恥ずかしがって村へ行かないと言い張り、丘に残ることになった。


 毛布を届けに村の中央広場に着くと、村人が集まって来る。


 待ちかまえていたデルトガ村長がうやうやしく俺から受け取り、村人に配る。


 まあ、儀式みたいなもんだ。


 一人一人配るわけではなく、家長に渡していく。だからそれ程時間はかからない。


「しかし不思議な毛布でございますな。なめらかでいて軽く触れているととても暖かい。大層なものをいただき感謝いたします」


 そりゃそうだろうな。

 こちらの世界にはないからなぁ。(フリース毛布…)


「あとは布団ですね。それもこのままカール達と運んできます」


 そのまま作業を繰り返す。

(敷き布団は大変だった)


「古い藁はどうすんだ?」


「灰にして畑に混ぜるんだ。畑に山を作っとくけど、これくらいはそれぞれの家でやってもらうよ」


 カールはそう言うとカゴを一つくれた。中にはパンが入っている。


「これ、姉ちゃんと食べて」


「おう、ありがとな」


 丘に帰りながらパンを眺める。


 だいぶ食糧難は脱したかな、と少し嬉しくなる。


 丘の上にカリンの姿が見える。


「カリン!パンをもらったよ!」



 つづく

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