第79話 女神様と妄想!

「おい」


 はい。


 宴の後、丘に引き上げて眠っていた俺が薄眼を開けると、そこは再びあの不思議な空間であった。


 黒狼を倒した事で再び女神様に会えるのではないかと思っていたが、予想通りである。


 フォリアは、と見ると…おお!大人のお姉さんの方だ!


「何を見ている」


「見てません!」


「…まぁ良い。それにしてもヒロキ、よくやったな」


「黒狼だろ。へへ、俺1人の力じゃないけど倒したぞ」


「うむ。お陰で信仰心を集め、私もこの姿になれた。礼を言うぞ」


 あちこちバィンバィンのお姿は一見の価値ありだ。それでいて軽装の戦姿というのがアンバランスな…。


「おい、ヒロキ」


「は、はい?」


 いつに無いその声音に緊張が走る。

 きっと今から重要な事を告げられる気がする。反射的にゴクリと唾を飲む。




「ヒロキよ。お前、あの娘に気があるのか?」




 へっ?


「確かにあの者は可憐でそれでいて勇気もある。お前のような自立しかけの若者がかれるのはわかる」


「ままま、待て!なんでそうなるんだ?俺はカリンの事なんてべべべ別にッ」


「そうか?では先に忠告しておく。あの者には手出しはさせぬ」


「へっ?」


「あの少女に手出しはならぬといっておる」


 ええー!!?

 なんでー⁈


「当たり前じゃ。アレは我が身に捧げられた物。私の物じゃ」


 一瞬、大人お姉さんのフォリアに抱かれたカリンの映像が浮かんでしまう。


 いやいやいや。


 俺は頭を振って妄想を払う。


「その…フォリアの趣味に反対する気は無いけどさ、カリンの気持ちも大事だと思うぞ」


 俺は出来るだけ理解があるのが伝わる様にやんわりと伝えた。

(これでカリンがアッチの趣味だったらヘコむ…いや美人の2人ならアリか…?)


「お前…何を言うておる?」


 あう、なんか目が怖い。


 妄想がバレた?(長い髪であちこち隠れた2人がこう…)


「また下らぬ事をッ!」


 わあ、すいません。


 自分でもどうやったか分からないが、この空間で取りあえず土下座した。


 つづく

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