第71話 勇気ある者!
「やった!」
「やりましたね!」
俺とカリンは駆け寄った。
黒狼の血と体液の飛沫がお互いあちこちに付いている。
それでも俺達は手を取り合って喜び合う。
「ちょっとぉ!まだコイツらがいるんだよ!」
カールの声にハッとする。
黒狼は倒したが、まだ狼の群れは俺達を囲んでいた。
「水は?」
「もう残ってないよ!」
カールが悲痛な声を上げる。
確かにマズイ。
いや、いざとなれば『アレ』をやる。
俺はその覚悟がある。
暴れるだけ暴れまわってやる。
これは無茶でも無謀でも無い。
この努力を無駄にしないための、生きるための行為だ。
「ヒロキ、どうしよう…」
ついに水が尽きる。
俺は2人に向かって
「俺が
「ヒロキ?」
「いいから!」
俺はカリンが投げ捨てた加圧式水鉄砲を拾い上げる。銃身を持って振り回すのだ。
「無理だよ…。狼がみんな集まって来ちゃった」
カールも銃身を持ち直して打撃に転じる。だがその言葉は弱々しい。
「焦るな!カリンを真ん中にして俺と背中合わせになれ。…このまま少しずつ村へ向かうんだ!」
しかし狼の群れは思う様にはさせてくれない。囲みは厚みを増し、奴らが群れで狩りをする生物だということを認識させる。
「うわっ!」
一頭が俺の袖をかすめる様に飛びかかって来る。慌てて避けると空を切る牙がガチリと音を立てた。
どうする?
どうすれば2人を助けられる?
と、そこへ——!
「ウチの救世主様に何すんのよッ!」
怒号とともに馬に乗ったエレミアが
年老いた馬だが荷を引く馬だけに
エレミアー!!(助かったー!!)
そしてエレミアの後に幾人かの村人が続く。皆手に農業用フォークや鎌、長い棒を手に駆けて来た。
わあっと歓声が上がる。
それに驚いたのか、狼達が動きを変えた。元来た方へ退き始めたのだ。
今度こそ、やった!
村人たちが声を上げている内に、狼の群れは風の様に駆け去り、その姿はあっという間に消えてしまった。
そして黒狼の大きな死体だけが取り残されたのだった。
つづく
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