第69話 黒狼と戦う!

 俺は慌てて足を踏ん張り、リールを巻き上げる。


 ゆるんだ分を取り戻すが、それより先が巻けない。


(ロック…!ロックかけなきゃ!)


 あらかじめ点検していて良かった。使い方を確かめておいたのだ。なんとかロックすると、それ以上テグスが流れなくなる。


 カリンの方は上手に水をはなち、狼達を寄せ付けないようにしてくれる。


 だが水鉄砲アレもタンクが空になればヤバい。


 黒狼も前脚を振り回してテグスを切ろうとする。何度か俺の身体をかすめて大きな爪が空を切る。


 俺は体を回して黒狼に背を向け、肩越しにテグスを担ぐ様にして前へ思い切り引いた。


「ぐぬぬぬぬ……」


 俺も歯をくいしばる。


 ひときわ大きな動きが伝わって来た。


 何度か奴の爪がテグスに引っかかるが、糸はなんとか持ちこたえている。


「あっ!ヒロキ!」


 カリンが悲鳴の様な声を上げた。

 なんだ?何が起きた?


「カリン!無事か!?」


「私ではありません!くいが…抜けかかっています!」


 なんだとぅ⁈


 やばいやばいやばい!


 抜けたら千載一遇のチャンスを逃してしまう。


 何とか盗み見ると、地中に埋めたはずのくいが出かかっている。


 そこへ、白いほっそりとした手がさっと伸びて来た。


「カリン⁈」


「私が押さえます!どうせもう水は有りません!」


「…わかった!素手で触るなよ!」


「はい!」


 カリンはえりを外して右手に巻くと、くいを足で踏みつけて押さえ、テグスを引いた。


 今までに無い力が加わり、一気に手応てごたえに変わる。


 いける!




 つづく

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