第60話 妬いてます!
ユリウスというイケメンに負けた引け目から、俺は盗み見るようにカリンの様子を伺う。
……。
…………。
わ、笑っている!
エレミアと楽しそうにキラキラ騎士の話をしているッ!
心なしか頬を赤らめているッ?!
く、くっそー!
俺だって、俺だって頑張ったのに!
(頑張って刺された)
「ぐやぢい〜!」
俺は半泣きで丘を駆け下りた。
カリンのバカバカ、ちょっと顔のいい奴がいたらそっちが気になるのね?
なんて事は思わなかったが(ちょっと思った)、走って行くと少し気分が落ち着く。村の端まで行くと途端に目の前が開ける。
実りのない麦畑が広がるはるか向こうに、黒い雲が見えた。
「ヒロキ、どうしたのです?」
追って来たカリンが息を切らせながら問う。
「…何でもない」
「また、無茶をする気ですね?」
「何で?」
カリンは俺が見ていた遠くの空を指した。
「東の空が暗くなっています」
そう、雨雲とは明らかに違う真っ黒な雲が彼方からこちらに向かって流れてくるかのように見える。
俺が走り出した理由は違うのだが、カリンは俺が黒い霧と戦うために走り出したと受け取ったようであった。
そうだった。
俺はあれを
なぜ俺なのか、まだ聞いてはいない。
けれど俺は呼ばれてここに居る。
ネガティヴになっている場合ではない。
幸いなことに、黒い霧はかなり遠い。
今のうちにフォリアへの信仰を強くしなくては。
そしてリール村に黒い霧を寄せ付けないようにしなくてはならない。
俺は湧き上がった勇気でイケメン騎士とやらへのヤキモチを閉じ込める。
「よし、カリン。やる事はたくさんあるぞ!」
「はい、ヒロキ!」
金髪の少女は明るく微笑んだ。
つづく
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