第50話 『銀龍亭』再び!

「おう、お前ら帰りに寄ってけよ!オマケしてやるからな」


 ベーコン屋の親父さんに手を振りながら、俺達は『銀龍亭』に向かう。


 コレが一番の楽しみだ。


 店に入ると、前と同じ席が空いていたのでそこに陣取る。


「ねぇねぇ、あんた、町に来てはこんないいとこ来てるの?」


 カールは幼なじみに「ずるい」とばかりに責められている。


「ちゃんと仕事してるだろ!コレは…そう、『せいとうなほうしゅう』ってヤツだ!」


 コリンがエレミアを「まぁまぁ」となだめている。


 カリンと俺が微笑みながらそれを見る。この構図は…やめとこう。

(恥ずかしい)


 再びカールのおすすめを頼む。

 食事が来るまでお金の計算だ。


「今日も売り上げ良さそうだな」


「そりゃ、あれだけ準備しているんだから当然です」


 カールが言うのは看板とかラッピングの事だ。あの準備が売り上げを左右する。


 大きな木のテーブルの上に売り上げを並べて集計すると、今回はなんと前回のおよそ5倍!


 銅貨397枚と小銅貨5枚!


「重いと思ったら、そんなにあったんですね」


 カリンも感心している。

 早く両替したいものだ。

 銅貨50枚で銀貨1枚だから、だいたい銀貨8枚になる。


 安い馬も買えそうだ。


「小麦の袋も銀貨1枚で10袋買えるから、持って帰れるわね」


 エレミアも鼻高々でそう言う。


 そこへお楽しみの料理が来た。


 今回は、胡桃入りの焼きたてパンにバターを落としたもの。


 それにジャガイモがくずれんばかりに煮込まれたホワイトシチュー。胡椒で臭みを消したほろほろの豚肉入り。


 香草の香りが肉の脂と相まって匂い立つ子羊の骨つき肉。岩塩と子羊肉の脂が舌の上でスパークする。


 おまけにクリームチーズにレーズンと胡桃を入れて練りあげた甘いデザートもつけて…。


「いただきまぁす!」





 つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る