第40話 消滅の村!

 他の村が無くなった?


「どういう事だ?」


「無かったんだ。荒れ果てた村の跡が残っているばかりで…」


 黒い霧が迫ってきているのは鬼門の方角——東北の方角と聞いていたので、リール村ではそれを避けて他の村へ人を出しだのだった。


 それなのに。


「ここから東北の方のエドモスの村は先月滅びてしまったと聞いてはいたが、真東の方角にあるネラノ村がまさか…」


「カリン、ここから近いのか?」


 カリンの顔色も良くない。


「となり村といっても過言ではありません。村の者も嫁いで行ったりしています」


「ケンプルさん、その村は黒い霧にやられたようでしたか?」


 問われた方は首を振ってわからない、と返してきた。


「だが影響があったのは間違いない。周りの畑を見てきたが、うちと似たようなものだった。村の中は火を放って始末したような…」


 俺はしばし考える。


 その東の村が滅びたとしても避難民がリール村に来ていない。皆町の方へ流れて行ったのだろうか?


 俺がそれを口に出すと、おそらくそうではないかと皆が肯定した。


「町への道は1つではありません。ネラノ村から直接町に行く道もあります。もしかしたら…」


 ケンプルさんは少し濁すように言う。


「なんですか?構わないから言ってください」


「…もしかしたらこの辺り一帯が持たないと判断して、遠くまで流れて行った可能性もあるのではないでしょうか?」


 なるほど。


「ネラノの村長はまだ若い。村に見切りをつけてさっさと安全な町…神殿のある方まで移住したのだと思われます」


 一言知らせてくれても良さそうなものだが、ケチな奴もいたものだ。


「ヒロキ、おそらくそれは移住者の数を増やしたくなかったのではないでしょうか」


 カリンの言葉に俺は詰まる。

 受け入れる数が多過ぎれば、受け入れる側で手を差し伸べられ無くなる。


 俺の世界でもあった事じゃないか。


 カリンは落ちていた木の枝で地面に簡単な地図を描いた。


「ここがリール村です。こちらがネラノ、エドモスです」


 これって…。


「ヒロキ、リール村と黒い霧の間に隔てるものは何もありません」




 つづく

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