第36話 家畜を飼いたい!

 カリンに村長との話をすると喜んで賛成してくれた。


「大量に荷物を運ぶ手段はあるかな?」


「そうですね…普通なら馬や牛、ロバに荷車を引かせる事でしょうか。村には最早動物はおりませんが、荷車は残っています。皆で一緒に引いたり押したりすればそれなりの量が運べるでしょう」


「…わかった。もう一つ知りたいんだが、家畜の相場はわかる?」


「お値段ですか?私はあまり…。今まで村で購入した事はあまりないですね。自分達で繁殖させていたので、買ったことは…」


「そうか。飢饉で手放したり食っちまったんだな」


 カリンは目を伏せた。


「丘に捧げた物もあります。羊や山羊…牛も…」


 おっと、しまった。

(それは女神・フォリアが食べたのだろうか?)


「えっと…ごめん。それから、家畜を飼うなら餌になるものは村にあるかな?」


「餌になるもの…少ないですが今からなら、枯れた草や空麦の穂と藁などを準備できるでしょう。ただ多くは採れません」


「うん、わかった。ありがとう」


 例えば、乳牛がいれば少しでもミルクが手に入る。あるいは馬だ。荷車を引かせれば、その分の人手を別の村へ取引に行かせられる。


 だが家畜の分まで飼料を買う余裕があるかわからない。馬か牛が一頭だけひと冬越せるくらいの草や藁はありそうだが…。



 丘に着くとカリンが裁縫箱の中から何か持ち出してきた。


「ヒロキ、これは何に使うものでしょうか?」


 何だっけこれ?

 薄いアルミの板に細いハリガネで菱形が付いている。


「ちょっと待ってて」


 俺は部屋に入ると、家庭科の本を探した。



 つづく

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