第30話 女神様へのお願い!

「魔除けとな?」


 フォリアの問いに俺は頷いた。


 まずは飢饉の状態から村が抜け出す事。そのために今手探りで村の産業になりそうなものを探している。


 この冬をなんとか越せば次の麦蒔きの季節が来る。


 来年の収穫まで持ちこたえれば、リール村は元どおり麦を主産業とする村に戻れる。


「それには今しばらく俺の部屋のものでまかないたい。町へ行けば収入を得られる事がわかったし、村人たちが安全に街道を通れれば収入も増えるんだ」


 今のままでは1日分の食料を確保するのが精一杯だ。人手がいる。


「そうか、それならば銀を用意せよ」


「へっ?」


「それが一番、私の聖なる力を宿すことができる」


 それが無理なんだよ!

 いくらすると思ってるんだ!


 俺はフォリアに人間側の事情を説明する。彼女はふむふむと理解してくれた。


「カリンから聞いたんだけど、神殿で清められた水や炎が魔を祓うと言っていた。水にその力を入れてくれないか?」


「よかろう。それくらいはしてやるぞ。早速準備せよ」


 そう言うとフォリアは銀の髪をなびかせ、クルリと身体をひねって光とともに消えた。


 同時に俺は目を覚ます。


 まだ、夜中だった。

 月の光がまぶしい。


 いや、別の所から光を放つものがある。カリンの小屋が中から光を放っていて、白いシーツの幕が風に揺れている。


「カリン⁈」


 俺は何事かと慌ててシーツのカーテンをめくった。


 そこにいたのは、カリンでもなくフォリアでもない、光り輝く少女だった。




 つづく

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